2026年10月1日、育児・介護休業法が改正され、「3歳以上~小学校就学前の子」を育てる従業員に対し、企業は柔軟な働き方の仕組みを最低2つ以上必ず提供しなければならなくなります。
これまで、育児中の働き方の配慮は“努力義務”に留まる部分が多く、会社ごとに温度差がありました。しかし、法改正により“義務化”されることで、日本のワークスタイルが大きく変わる節目となりそうです。
ここでは、どんな制度が対象なのか、企業はどこまで対応しなければならないのか、現場でどんな変化が起きるのかをわかりやすく整理します。
■どんな人が対象になるの?
対象となるのは次の条件に当てはまる従業員です。
-
3歳以上~小学校就学前の子を育てている
-
正社員・契約社員など雇用形態は問わない(短時間労働者も対象)
これまで制度の中心だった「3歳未満」に比べ、対象年齢がぐっと広がります。
保育園・幼稚園・こども園に通う時期は、発熱・行事・送り迎えなどで仕事の調整が必要になる場面が多く、「もっと配慮がほしい」という声が多くありました。この改正は、そのニーズに応える形です。
■企業が必ず実施しなければならない「5つの選択肢」
法律が示す柔軟な働き方のメニューは次の5つです。
① 始業時刻の変更(時差勤務)
朝の送迎に対応しやすいよう、出勤時間を遅らせたり早めたりできる。
② テレワーク(月10日まで)
自宅で勤務できる日を確保。
子どもの急な体調不良にも対応しやすくなります。
③ フレックスタイム制の利用
1日の始業・終業を個人で調整できる働き方。
④ 短時間勤務(1日の勤務時間を短くする)
保育園の送迎時間に合わせた就業が可能。
⑤ 保育施設の送迎を行うための時間単位の休暇
「30分だけ抜けたい」「送迎のために1時間だけ休みたい」
といった細かな休暇を認める仕組み。
■この5つのうち“最低2つ”は提供しないといけない
企業はこの中から2つ以上の制度を必ず導入し、従業員が実際に利用できる状態にしておく必要があります。
ここがポイントです。
-
“名前だけ”の制度ではダメ
-
利用しようとしたら拒否されるような運用も不可
-
小規模企業も例外ではない
-
業務バランスを理由にゼロ回答は認められない
制度を導入しても、
「うちは実質使えません」
という会社も少なくなかったため、“義務化”によって利用者の権利が強化されるかたちとなります。
■なぜここまで“働き方の柔軟化”が求められるの?
背景には3つの事情があります。
●(1)働く親が増えている
共働き世帯は約1,200万世帯を超え、過去最多が続いています。
しかし、仕事と育児の両立が難しいとキャリアを諦める人も多く、社会的な課題となっていました。
●(2)人手不足の深刻化
企業側も「辞められると困る」という状況が広がっており、柔軟な働き方は“企業存続のための投資”という位置づけになっています。
●(3)テレワーク文化が定着
コロナ禍をきっかけに、テレワークの運用ノウハウが企業側に蓄積されたことも大きいです。
■企業側はどんな準備が必要?
制度を“作るだけ”でなく、“運用できる”状態にすることが求められます。
●(1)業務の切り出し・マニュアル化
テレワークでもできる仕事を整理したり、属人化を解消する必要があります。
●(2)管理職への研修
「制度はあるけど上司が理解してくれない」という声は非常に多い部分。
管理職の意識改革は必須です。
●(3)人員配置の再設計
短時間勤務やテレワークに合わせてチーム単位での業務配分も見直す必要があります。
■子育て中の従業員にとってのメリット
●(1)選べる働き方が増える
“合う制度がないから辞める”という状況が減ります。
●(2)急な対応がしやすくなる
子どもの発熱や行事で振り回されがちな時期でも、仕事との両立がしやすくなります。
●(3)キャリア形成を諦めなくて済む
柔軟な働き方が常態化することで、昇進・昇格を目指す人も増えます。
■反対に、現場から聞こえる不安も
●(1)中小企業の負担
制度整備のコストや人員調整に苦しむケースが出る可能性があります。
●(2)職場内の不公平感
「特定の人だけが優遇されている」と感じる声が出ると、職場の雰囲気が悪くなる可能性も。
そのため、制度の趣旨を全員に理解してもらう工夫が必要です。
■まとめ
2026年10月からスタートする今回の改正は、
“育児と働くことを両立するのが当たり前の社会”に向けた大きな一歩です。
-
企業は柔軟な働き方の選択肢を2つ以上提供
-
テレワークや時差勤務などが利用しやすくなる
-
子育て中の従業員が仕事を続けやすくなる
-
人手不足の改善にもつながる可能性
子どもが小さい時期の働き方は、家庭の未来にも、会社の未来にも大きく影響します。
この制度改正は、単なる“義務化”ではなく、働く人と企業の双方にとって大きなチャンスになるはずです


コメント