2025年12月16日、公正取引委員会は電動工具大手のマキタに対し、下請法違反(不当な経済上の利益の提供要請)があったとして、再発防止を求める勧告を行いました。
背景にあるのは、下請け業者に多大な負担を強いる「金型の長期無償保管」という根深い問題です。
■ 1. 事件の概要:3000個超の金型を放置
公取委の調査によると、マキタは長期間発注の見込みがないにもかかわらず、以下の不当な行為を行っていました。
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対象: 下請け業者84社
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内容: 電動工具の製造に使う金型計3,214個を無償で保管させた。
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実態: 中には30年以上も無償で預けられたままのケースもありました。
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対応: マキタは既に保管費用相当の約2,600万円を支払い、不要な金型の回収や廃棄を終えています。
■ 2. そもそも「金型の保管」とは何が問題なのか?
製造業において「金型」は製品の形を作るための重要な資産ですが、その保管には多大なコストとリスクが伴います。
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場所とコストの負担: 金型は非常に重く、サイズも大きいため、保管には専用の倉庫やスペースが必要です。下請け業者は、本来他の仕事に使えるはずのスペースを、発注予定のない金型のために無償で提供させられていました。
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メンテナンスの手間: 錆(さび)を防ぐための防錆剤の塗布や、品質維持のための管理も下請け側の負担となることが多いです。
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下請法での規定: 下請法では、発注者が自らの都合で金型を預け続ける場合、適切な保管費用を支払うことが義務付けられています。これを無償で強いることは、下請け側の利益を不当に奪う行為(経済上の利益の提供要請)にあたります。
■ 3. 相次ぐ大手への勧告。業界全体の「膿」を出す動き
金型の無償保管に関する問題はマキタに限ったことではなく、製造業全体で問題視されています。
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シマノの事例: 2025年9月には自転車部品大手のシマノも同様の理由で勧告を受けています。
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公取委の姿勢: 「長年の慣習だから」という言い訳は通用しなくなっています。公取委は、力関係で弱い立場にある下請け業者のコストを削ることで利益を上げる大手の姿勢を厳しく監視しています。
■ まとめ:求められる「発注側の責任」
マキタは今回の勧告を受け、「研修などを通じて再発防止に努める」とコメントしています。
金型は「いつか使うかもしれないから」と安易に預けっぱなしにするのではなく、発注側が「必要性の判断」と「適正なコスト負担」を行うという当たり前のルールが、改めて問われています。

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