サウジアラビア主導で開かれる国際経済会議「未来投資イニシアチブ(FII)」が、12月1日に初めて東京都内で開催されました。通称“砂漠のダボス会議”と呼ばれるこの大型投資イベントで、高市早苗首相が人気アニメ『進撃の巨人』のセリフを引用し、世界の投資家に向けて日本への投資を強く呼びかけたことが話題になっています。
今回のカカニュースでは、高市首相の発言の意図、日本政府が狙う国際投資戦略、サウジとの関係強化の背景などをわかりやすく解説します。
■ 高市首相、「全部俺に投資しろ」引用の真意
高市首相は会場で、『進撃の巨人』の登場人物・エルヴィン団長の有名なセリフを英語で引用し、会場の投資家に向けて力強くアピールしました。
“Invest everything in me(全部俺に投資しろ)”
そのうえで、
「ジャパン・イズ・バック。インベスト・イン・ジャパン(日本は戻ってきた。日本に投資して)」
と続け、日本の復活を強調。国際舞台でのアニメ引用はインパクトが大きく、SNSでも賛否を含め大きな注目を集めています。
背景には、「メッセージを強く印象付けたい」狙いがあるとみられます。世界中の政府要人や投資家が集まる場で、限られた時間内に日本の存在感を示す必要があるからです。
■ なぜ日本がここまで投資呼びかけを強めるのか
政府は現在、日本を“世界有数の資産運用拠点”として位置付けることを重要政策に掲げています。岸田政権時代から続く「資産運用立国」の流れを、高市政権がさらに推し進める形です。
片山さつき財務相は同会合で、コーポレートガバナンス改革の強化や、海外投資家が参入しやすい環境整備を進めていると説明。特にAIや半導体など17の戦略分野への重点投資に言及し、成長分野への資金誘導を進める姿勢を示しました。
政府としては、国内の少子高齢化で縮小する内需を補うためにも、海外マネーを呼び込みたいという強い思惑があります。
■ サウジとの関係強化、その裏にある思惑
今回のFII会合が日本で開催されたのは初めてで、背景には日本とサウジの国交樹立70周年があります。サウジは石油依存からの脱却を目指す「ビジョン2030」を掲げ、巨大都市プロジェクト「NEOM」や2030年リヤド万博など、大規模投資案件が急増しています。
赤沢亮正経済産業相は「サウジと日本がグローバルパートナーとしてより深い協力関係を築く好機だ」と強調。インフラ整備、エネルギー、AI、ロボティクスなど、幅広い分野で新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。
日本としても、サウジ関連事業への参画は国内企業にとって大きな成長機会であり、両国の利害が一致しているといえます。
■ FIIとは何か?“砂漠のダボス”の正体
FII(未来投資イニシアチブ)は、サウジ政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」が主催する国際経済会議です。毎回、各国の首脳、財界トップ、巨大ファンドの運用責任者が集まる世界的イベントで、政治・経済・テクノロジーの動向を左右する「発言の場」として知られています。
2025年2月に米マイアミで開かれた会合にはトランプ大統領も登壇しており、サウジの外交・経済影響力の高さがうかがえます。
■ 小池都知事もアピール合戦に参加
会合には東京都の小池百合子知事も登壇し、東京を「投資家にとって完璧な都市」とアピール。アジア最大級の経済圏である東京の優位性を強調し、首都として国際金融都市を目指す姿勢を改めて示しました。
国と都が並んで海外投資家にアピールする構図は、日本が本格的に“世界のマネー争奪戦”に踏み込んでいることを象徴しています。
■ カカニュース的まとめ:アニメ引用は効果的だったのか?
高市首相のアニメ引用は賛否を呼んだものの、少なくとも「世界に向けたメッセージ発信」という点では成功したと言えます。国際会議での発言は、記憶に残るかどうかが非常に重要であり、その意味で『進撃の巨人』という世界トップクラスの知名度を持つ作品を引き合いに出した効果は大きかったと考えられます。
一方で、日本が呼びかける海外投資の流れがどこまで実際のマネー流入につながるかは今後の政策次第。ガバナンス改革、規制緩和、成長産業支援など、投資家が求める環境整備が着実に実行されるかどうかが最大のポイントになります。
カカニュースでは、今回のFII会合を含め、日本の国際経済戦略や海外投資動向を今後も継続して追っていきます。


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