【解説】大川原化工機事件、捜査員への「賠償請求」を検討。冤罪の責任は誰が負うべきか?

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2025年12月16日、大川原化工機事件をめぐる住民監査請求の手続きが行われました。警視庁側が、違法な取り調べを行った捜査員個人に対して賠償金の支払いを求めることを「検討している」と明かしたことで、大きな波紋が広がっています。



■ 1. そもそも「大川原化工機事件」とは?

噴霧乾燥機(粉末を作る機械)を輸出したことが「兵器転用可能な輸出規制違反」だとして、社長ら3人が不当に逮捕・起訴された事件です。

  • 冤罪の証明: 起訴後に「そもそも規制対象外だった」ことが判明し、検察側が公訴を取り消すという極めて異例の結末を迎えました。

  • 悲劇: 拘置所に勾留中だった顧問の男性は、がんが見つかったものの適切な治療が受けられず、釈放前に亡くなっています。

  • 判決: 2024年5月の東京高裁で、警察の捜査と検察の起訴の「違法性」が完全に認められ、都と国に約1億6600万円の賠償が命じられました。

■ 2. 「住民監査請求」の狙い:税金で済ませていいのか?

通常、公務員のミスによる損害賠償は国や都が支払いますが、今回、会社側は「住民監査請求」を行いました。

  • 主張: 「故意や重大な過失がある場合、個人に支払わせるべきだ(求償権の行使)」。

  • 理由: 公判で現職警察官が「捏造(ねつぞう)と言われても仕方ない」と証言するなど、組織的な不正が明らかになったため、「個人の責任を明確にすべき」と訴えています。

■ 3. 警視庁の言い分:「捜査員」と「幹部」で異なる対応

16日の陳述で明らかになった警視庁の方針は、以下の2段階に分かれています。

  1. 現場の捜査員: 違法な取り調べを認定された者には、賠償請求を「検討している」。

  2. 捜査幹部(2人): 「組織全体の問題であり、直ちに重大な過失があるとは言えない」として、現時点では請求に否定的な立場。


■ 争点:なぜ幹部の責任は問われないのか?

この点には批判の声も上がっています。現場の捜査員だけに責任を押し付け、捜査方針を決定した幹部の責任を不問にするのは、「トカゲの尻尾切りではないか」という指摘です。

  • 会社側の主張: 「組織全体の問題だからこそ、トップの責任を明確にすべきだ」

  • 今後の注目点: 監査委員がどのような勧告を出すか。もし「幹部にも請求せよ」との判断が出れば、警察組織に激震が走ることになります。


■ まとめ:日本の司法制度への一石

この事件は、単なる一つの冤罪事件にとどまらず、「暴走した捜査にどう歯止めをかけるか」という日本の司法全体の問題を突きつけています。

もし捜査員個人への賠償請求が実現すれば、今後の警察捜査のあり方に極めて大きな影響を与えることになります。

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