長年「ブドウ界の王様」として親しまれてきた 巨峰 の栽培面積での首位が、ついに シャインマスカット に奪われる形となりました。
甘くて食べやすい白系ブドウのシャインマスカットは、皮ごと食べられる利便性や栽培のしやすさが背景にあり、市場でも高い人気を誇っています。
◆ 巨峰の栄光と衰退
巨峰は1940年代に誕生した黒系ブドウで、大粒・甘み・果汁の多さ が特徴。見栄えの良さから贈答用としても人気が高く、生食用として長らく国内でのトップ栽培面積を誇ってきました。
農林水産省の統計によれば、巨峰の栽培面積は2003年に 6368.9ヘクタール を記録しましたが、2022年には 2327.4ヘクタール と大きく減少。
東京・中央卸売市場での取り扱い量も、2024年には 約2146トン で、10年前と比べておよそ6割減となりました。
栽培の難しさも一因となっていたようです。巨峰は色づきの管理や実の成長調整に手間がかかり、熟練の技術が求められます。加えて国内のブドウ農家は高齢化が進み、労力のかかる巨峰の栽培を敬遠する動きが目立つようになりました。
◆ シャインマスカット、急成長の背景
一方、 シャインマスカット は農研機構が開発した白系ブドウで、種がなく皮ごと食べられるのが最大の特徴です。
甘さが強く、見た目も美しく、贈答用や家庭用の両方で人気を集めています。
品種登録直後の2007年には栽培面積 わずか2ヘクタール だったが、2022年には 2672.9ヘクタール に急増し、巨峰の栽培面積を上回りました。
つまり、わずか15年で 1300倍以上 に拡大したことになります。
東京都中央卸売市場での取扱量も約 8152トン と、巨峰の4倍近くに達しており、単価も3割ほど高いといいます。
農水省によると、シャインマスカットへの切り替えは「栽培が比較的容易で単価も高いこと」が背景にあり、農家にとって収益性の面でも魅力的な選択肢となっているようです。
◆ ブドウ市場の変化と今後
シャインマスカットの急成長は、単なる品種の人気だけではなく、農業現場の高齢化・労働負担の軽減・市場価値の高さ が複合的に作用した結果だと考えられます。
巨峰も依然として一定のファンを持ち、贈答用や伝統的なブドウとしての存在感は健在だが、市場全体での影響力は徐々に縮小しています。
今後は、シャインマスカットの栽培面積の拡大とともに、巨峰や他の伝統的品種がどのように位置づけられていくかが注目されます。
ブドウ市場は「味・手軽さ・価格・栽培のしやすさ」のバランスがますます重要になってきており、消費者の需要も多様化する中で、農家の選択はますます戦略的になりそうです。
コメント