2026年4月1日、雇用保険の制度が大きく見直されます。
今回の改正は、子育て世代への支援を強めつつ、働く人の独立や転職のしやすさ、高齢者の働き方の見直しなど、幅広い世代に影響がある内容がそろっています。
特に注目されているのは次の3つ。
-
新しい給付金が2つスタート（出生後休業支援給付金／育児時短就業給付金）
-
自己都合退職でも失業給付を受け取れる時期が早まる
-
60歳以降の雇用継続給付が縮小される
制度の名前だけ聞くと難しく感じますが、実際の生活に落とし込むと「転職しやすくなる人」「育児と仕事を両立しやすくなる人」「定年後の収入計画が変わる人」が出てくる、かなり実用的な改正です。
ここからは、どんな人にメリットがあるのか、どんな点に注意すべきなのかをわかりやすく解説していきます。
■① 「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」が新しく誕生
今回の改正で最も大きいのが、子育て支援のための新しい給付金が2つ作られることです。
●出生後休業支援給付金
イメージしやすく言うと、
「赤ちゃんが生まれてからしばらく休む親を金銭的に支える仕組み」
です。
男性の育休の取得率を高める狙いもあり、
-
妻の出産直後に休みたい
-
育児にしっかり関わりたい
-
でも収入が減るのが怖い
と感じる人には大きな後押しになります。
これまで「育児休業給付金」はありましたが、制度のスキマを埋める形で“出産直後の数週間”を重点的に支える給付が加わります。
●育児時短就業給付金
こちらは、
「仕事を少しセーブしながら子育てしたい人の収入減をサポートする制度」
です。
子どもが小さいうちは
-
フルタイムに戻るのは不安
-
時短勤務を選ぶと給料が下がる
という悩みが多く、特に女性のキャリアに影響してきました。
この新給付金によって、
時短勤務にしても収入が極端に落ちにくくなる
というメリットが生まれます。
育児と仕事のバランスを取りたい家庭にとっては、大きな安心材料です。
■② 自己都合退職でも失業給付が“早く”受け取れるようになる
もう一つの大きな変更が、自己都合で退職したときの給付制限期間が短くなることです。
これまで：原則 2か月の待機期間
改正後：1か月に短縮
●どう変わる？
たとえば、
-
職場の環境が合わずに辞めたい
-
キャリアチェンジのために一度離職したい
-
体力・メンタル面で今の仕事が難しい
という理由で辞めた場合、これまでは「すぐに失業給付がもらえない」ことが大きなハードルになっていました。
待機期間が半分になるだけで、
転職活動に伴う不安がかなり軽くなる
という声も多いです。
●なぜ短縮されるの？
近年、労働市場の流動性を高めることが日本全体の課題になっています。
「仕事を辞めたら終わり」ではなく、“次の働き方を探しやすい社会にする”という方向性が明確になりました。
■③ 高年齢雇用継続給付が縮小される
60歳以降も働く人が増える中で、今回の改正ではこの給付金が見直されます。
従来：最大 15%
改正後：最大 10% に縮小
この給付金は、
60歳以上でも働く人の給料が現役時より下がった場合、差を補う仕組み
として多くのシニア層に利用されてきました。
●なぜ減額されるの？
背景には大きく2つあります。
-
高年齢者の就業率が上がり、制度維持が難しくなってきた
-
給付金に頼らず、企業と働き手が“給料そのもの”を見直す方向にしたい
つまり、
「国の補助」→「企業の工夫と本人のキャリア設計」
に少しずつシフトしようとしている流れです。
●影響が出るのは？
-
60代で賃金が大きく下がる働き方をしている人
-
会社から再雇用されるパターンの人
特に再雇用の給料が低めの業界では、収入計画を見直す必要が出てくる可能性があります。
■子育て世代・転職希望者・シニア層…それぞれのメリットは？
●子育て中の家庭
-
出産直後の収入減が減る
-
時短勤務でも生活が安定しやすい
-
夫婦で育児を分担しやすくなる
共働き家庭にとっては、かなり大きなサポートです。
●転職・退職を考える人
-
給付制限が短くなることで、転職活動に余裕が生まれる
-
キャリアの選択肢を広げやすくなる
特に若い世代にとっては「辞める勇気」が持ちやすくなります。
●60歳以上で働く人
-
給付が減る可能性はあるが、企業側の賃金見直しに期待
-
働き方の多様化が進むことで、自分に合った働き方を選びやすくなる
シニアの働き方自体が大きく変わる転換点です。
■注意点もある
制度が変わるとメリットだけでなく課題も生まれます。
-
時短勤務の給付も、制度を理解していない企業では使いにくい
-
自己都合退職の給付短縮は、退職が増える可能性も
-
シニアの給付縮小で、年金＋賃金の生活設計を見直す必要が出る
-
中小企業では制度対応が追いつかないケースも
制度が用意されても、職場の理解がないと使いづらいという現実もあります。
■まとめ：2026年の雇用保険改正は“人生の選択肢を広げる改正”
今回の改正は、
-
子育て
-
転職
-
定年後の働き方
この3つのライフステージに大きな変化をもたらします。
新しい給付金で子育てがしやすくなり、退職後の不安は減り、高齢者の働き方も時代に合わせてシフトしていきます。
働き方の価値観が大きく変わっているいま、2026年の改正は「人生の選択を広げるための制度」として多くの人に影響を与えることになりそうです。
コメント