2025年8月8日夜、プロボクサーの神足(こうたり)茂利選手が急性硬膜下血腫により亡くなりました。享年28歳。
神足選手は、8月2日に東京・後楽園ホールで行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチに出場し、試合後に意識を失い病院に搬送されていました。
約6日間にわたる懸命な治療もむなしく、8日の午後10時59分に息を引き取りました。
■ 神足茂利選手とは
神足茂利選手は1997年生まれ、兵庫県出身のプロボクサーです。
身長は約170cm、スーパーフェザー級(日本基準で57.1kg以下)を主戦場とし、鋭いジャブと粘り強いフットワークで知られていました。
プロ入り後は着実に戦績を重ね、国内外での活躍を夢見て練習に励む日々を送っていました。
ファイトスタイルは攻撃的かつ冷静なカウンター型で、相手の出方をうまく読み、的確なパンチを放つ姿がファンに支持されていました。
ジム関係者によれば「練習熱心で後輩にも優しい性格」と評されており、将来の日本ボクシング界を担う存在として期待されていた選手です。
■ 悲劇の試合経緯
8月2日、後楽園ホールで行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチに挑戦した神足選手。
試合は互角の攻防が続きましたが、終盤にかけて被弾が増え、判定の結果、惜しくも敗北しました。
試合後のインタビューは行われず、控室へ戻った後に体調が急変。
意識を失ったため、関係者がすぐに救急搬送しました。診断は急性硬膜下血腫。
これは頭部への強い衝撃が原因で脳と硬膜の間に血液がたまり、脳を圧迫する状態で、迅速な手術が必要な極めて危険な症状です。
医師団による緊急開頭手術が実施され、集中治療室で経過を見守る状態が続いていましたが、容態は改善せず、6日後に逝去が発表されました。
■ 急性硬膜下血腫とは?
急性硬膜下血腫は、格闘技や交通事故などで発生することが多い外傷性脳損傷の一種です。
脳を包む硬膜と脳の間に血が溜まり、脳を圧迫してしまうことで命に関わります。
症状は以下のようなものです。
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激しい頭痛
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吐き気や嘔吐
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意識障害
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けいれん発作
ボクシングや総合格闘技ではヘッドギアを着用しない試合が多く、特に頭部へのダメージ管理が重要とされています。
■ ボクシング界の反応
訃報が伝えられると、日本ボクシングコミッション(JBC)や東洋太平洋ボクシング連盟は「深い悲しみと哀悼の意」を表明。
SNSでもファンや選手から追悼のコメントが相次ぎました。
ある元チャンピオンは「彼はリングの上でも外でも紳士だった。もっと試合を見たかった」と語り、別の関係者は「過酷な減量や練習の中で笑顔を絶やさなかった」とその人柄を振り返りました。
■ 過去にも起きたリング上の悲劇
ボクシングの歴史では、試合中や試合後の頭部損傷による死亡事故が複数報告されています。
日本でも過去にリング禍と呼ばれる事例があり、そのたびに安全対策が見直されてきました。
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2013年:試合後に急性硬膜下血腫で死亡したケース
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2018年:スパーリング中に脳損傷で命を落とした若手選手
今回の事故を受けて、JBCは「さらなる安全管理の徹底を検討する」とコメントしています。
■ 格闘技の安全と今後の課題
格闘技は選手の肉体的・精神的限界に挑む競技であり、常にリスクと隣り合わせです。
そのため、以下のような取り組みが今後さらに求められます。
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試合前後の脳MRI検査の義務化
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ダメージの蓄積を減らすための試合間隔調整
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セコンドやレフェリーによる早期の試合ストップ判断
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練習中の安全管理の徹底
神足選手の死は、選手生命だけでなく命を守るための制度設計の必要性を改めて突きつけました。
■ 最後に
神足茂利選手は、28歳という若さでこの世を去りました。
彼の真摯な戦いぶりと人柄は、多くの人の記憶に残り続けるでしょう。
ファン、関係者、そして家族にとって、彼の存在はかけがえのないものでした。
この悲劇が、今後のボクシング界の安全対策強化につながり、同じような事故が二度と起きないよう願うばかりです。
神足茂利選手のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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