日本の医療制度を支えてきた「紙の健康保険証」が、いよいよ原則廃止となります。
世代を問わず国民全員が持っている身近なカードがなくなるという決定に、多くの人が戸惑い、SNSでも大きな議論となっています。今回は、制度の詳細だけでなく、政治的背景、現場の戸惑い、さらに“廃止を押し進めたキーマン”についてもカカニュース的に深掘りしてお伝えします。
■紙の保険証はいつ廃止される？何が代わりになる？
政府が示した方針では、紙の健康保険証は原則として廃止され、今後はマイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」へ一本化されます。
廃止は段階的に進められ、すでに医療現場ではマイナ保険証の読み取りシステムが導入されつつあります。新規発行は停止され、更新のタイミングで順次終了していくため、国民が手元の紙保険証を失う日は遠くありません。
■そもそもなぜ廃止する？政府の“本気度”が高い理由
政府が紙の保険証を廃止する背景には、主に次の3つがあります。
●① 医療DX（デジタル改革）の加速
病院での受付をスムーズにし、患者の薬剤情報、特定健診情報を迅速に共有することが目的とされています。救急時の医師判断にも役立つと説明されています。
●② 行政コスト削減
紙の保険証は保険者（健保・協会けんぽ・共済組合など）が別々に発行しており、印刷費・郵送費などで毎年数百億円規模のコストが発生。それをデジタル化で大幅に減らしたい狙いがあります。
●③ マイナンバー制度の普及促進
これが実は最も大きな理由とされます。政府は長年、マイナンバーカードの普及に苦慮しており、利便性を実感できるサービスを増やすことで国民にカードを使ってもらいたいという意図があります。
■しかし現場の声は複雑──「便利になるのはわかる、だけど…」
医師会、薬剤師会、自治体、そして国民の意見は一枚岩ではありません。「便利になる」と歓迎する意見もありますが、懸念の声も根強いです。
●医療現場の懸念
-
読み取り端末が高額で、導入に時間がかかる
-
システム障害が起きた際の患者受付が混乱する
-
高齢者の使いこなしが不安
-
顔認証の精度に疑問がある
特に地方の小規模クリニックでは、システム更新の負担が重く、紙の保険証廃止が“現場へのしわ寄せ”になると指摘されています。
●国民の懸念
-
マイナンバーカード紛失時のリスク
-
プライバシーや情報連携の不安
-
カードを作らない選択肢が事実上なくなることへの反発
-
過去に起きたデータ紐付けミスへの不信感
実際、これまでにも「別人の情報が誤って紐付けられた」「薬剤情報が見られなかった」といったトラブルが報道され、国民の不安に火をつけています。
■紙の保険証が完全に消えるわけではない？“経過措置”の存在
混乱を避けるため、政府は「マイナ保険証を持てない事情がある人向け」に経過措置として資格確認書を発行する方針を示しています。
ただし、この資格確認書は
-
有効期限が短い
-
マイナ保険証の代替性が限定的
-
実質的には「マイナ保険証を持つべき」方向に誘導される
といった特徴があり、紙の保険証と同等の扱いとは言い難いものです。
■制度を押し進めた“キーマン”たちの思惑
カカニュースでは、この政策を推し進めた中心人物にも注目します。
●政治的背景
マイナンバー制度は安倍政権時代からの宿題であり、「国民のデータを一元管理し、行政効率を最大化する」という長期的な国家プロジェクトの一部です。
●デジタル庁の存在
2021年に誕生したデジタル庁は、各省庁がバラバラに行っていたデジタル施策をまとめる役割を担います。マイナ保険証はその中でも“最優先のKPI（成果指標）”とされてきました。
●厚労省の事情
医療DXは厚労省の悲願でもあります。これまで医療情報は地域・病院ごとに分断され、効率の悪さが課題とされてきました。マイナ保険証はその突破口として期待されています。
■医療DXの本当のメリットは？国民にとって“使える制度”になるのか
制度の評価は今後の運用にかかっていますが、メリットとされる点も確かに存在します。
●メリット
-
薬剤情報が自動で共有され、飲み合わせチェックが簡単になる
-
特定健診の結果がすぐに確認できる
-
転職や引っ越しのたびに保険証を待つ必要がない
-
紛失しても再発行が比較的スムーズ
特に薬剤情報の共有は大きく、過去には薬の重複処方による医療事故も起きているため、医療安全の向上につながるとされています。
●デメリット
-
個人情報の扱いに不安
-
システム障害時の対応が不透明
-
高齢者やデジタル弱者への負担
-
マイナカードの普及率に依存する
制度の信頼性を高めるためには、過去の紐付けミスや障害を減らし、透明性ある運用が求められます。
■現場の医師から聞こえる「本当の本音」
カカニュースが医療関係者の声をまとめたところ、こんな意見が多く聞かれました。
●「便利にはなる。でも準備期間が足りない」
デジタル化への賛成が多い反面、「導入が急すぎて現場が混乱する」という声が目立ちます。
●「制度の目的は理解できるが、国民の信頼を取り戻すべき」
紐付けミス、カード紛失、本人確認の問題が続いたことで、医療側も戸惑っています。
●「高齢者対応のサポート体制をもっと厚く」
高齢者がひとりで顔認証や暗証番号入力を行うのは難しく、受付が滞ることが懸念されています。
■国民が知っておくべき“本当に大切なポイント”
今後の国民生活に関わる重要なポイントは以下の通りです。
●① マイナンバーカードが必須に近づく
紙の保険証廃止により、カード未取得のままでは医療機関での手続きが複雑になります。
●② 個人情報管理の意識が求められる
紛失リスクや不正利用の防止は個人の責任も大きくなります。
●③ 運用中のトラブルは必ず発生する
制度の移行期には障害や混乱が起きやすく、国民側も“落ち着いて対応する姿勢”が必要になります。
■カカニュース的まとめ──制度としての正しさと、国民が抱く“違和感”の間
紙の保険証の原則廃止は、政府が描く「デジタル国家」の大きな一歩です。医療DXの推進、行政コスト削減、データ活用の効率化といった面で、合理的な政策とも言えます。
しかし、国民が強く不安や違和感を抱くのは「制度の理念」ではなく「運用の信頼性」が揺らいでいるからです。
-
情報紐付けミス
-
マイナンバー巡るトラブル
-
システム障害のリスク
-
高齢者対応の不十分さ
こうした現実を前に、「本当に大丈夫なのか？」という不安が消えないのは当然です。
制度そのものが良い悪いではなく、制度を“きちんと機能させること”こそが最重要課題だと言えるでしょう。
廃止が近づくにつれて、国民の間には
「便利になる未来への期待」
「情報管理への不安」
という2つの相反する感情が渦巻いています。
カカニュースでは今後も、制度の進展や新たなトラブル、現場の声を追い続け、最新情報をお届けします。
コメント