秋田大学の調査で、クマによる外傷(通称「クマ外傷」)は、被害者の9割が顔面に傷を負うことが明らかになりました。
顔を中心とした傷は、失明や出血、多臓器損傷などのリスクが高く、その後の生活に深刻な影響を及ぼすことがあります。
一体なぜ、クマは顔を狙うのでしょうか。本記事で解説していきます。
顔を狙う理由とは
調査を行った秋田大学高度救命救急センターの中永士師明教授によりますと、クマの攻撃が顔に集中する理由には、クマの習性と体の構造が関係しています。
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身長との位置関係
ツキノワグマの身長は1~1.5メートルほどで、人間とほぼ同じかやや高い位置にあります。クマが立ち上がると、前脚の位置がちょうど人間の顔面に届きやすくなります。 -
急所を狙う本能
クマ同士で争う場合、口をかんで相手を窒息死させる習性があります。そのため、顔は急所であると本能的に認識しており、人間に対しても顔を狙いやすいのです。 -
攻撃の目的は防御
クマは人を捕食するためではなく、逃げるためや威嚇のために攻撃します。その際、顔に一撃を加えることで相手を制圧しようとするため、顔面に傷が集中します。
外傷の特徴とリスク
クマに襲われると、鈍的外傷と鋭的外傷が同時に発生します。鈍的外傷は車と衝突したような打撲、鋭的外傷はナイフで刺されたような切り傷であり、深く複雑な損傷が特徴です。
特に顔面への攻撃は、以下のようなリスクがあります。
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眼球破裂や唾液腺損傷による生活の質の低下
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首の血管損傷による出血多量や失血死
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気管損傷による窒息死
中永教授は「クマ外傷はひとたび遭遇すると、その人の人生を変えてしまうほど凄惨です」と警鐘を鳴らしています。
精神的後遺症も深刻
調査によると、クマに襲われた被害者の約8割に精神的問題が見られました。具体的には以下の通りです。
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不眠:41%
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せん妄(意識障害):29%
外傷だけでなく、精神面への影響も長期化する傾向があります。
まとめ
クマ外傷は、顔面に集中する理由がクマの体格や本能にあることが分かっています。被害にあった場合、外傷の深刻さに加えて精神的な後遺症も残るため、遭遇を避けることが最も重要です。
市町村や登山者などは、クマの生息地では十分な注意を払い、鈴やラジオなどで存在を知らせることが被害防止につながります。
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