親の通院や急な呼び出し、役所での手続き。親の年齢が上がるにつれて、仕事を休まなければならない場面が少しずつ増えていきます。
ただ、仕事には仕事の都合があります。毎回休めるわけではありませんし、自分の有給休暇にも限りがあります。
「親のことだから仕方ない」と、毎回自分が仕事を調整していませんか?
実は、介護のために仕事を休む場合には、介護休業や介護休暇などの制度があります。また、家族が毎回付き添わなくても済むように、介護サービスや外部の支援を組み合わせる方法もあります。
大切なのは、仕事を辞めたり、有給を使い切ったりする前に、家族だけで抱え込まない仕組みを作ることです。
親の介護で仕事を休むのは、どこまで当たり前なのか?
親の通院に付き添うために午前休を取る。役所の手続きで午後から出勤する。急に親の体調が悪くなり、予定していた仕事を変更する。
こうしたことが一度や二度なら、何とか調整できるかもしれません。
しかし、これが毎週のように続くと話は変わります。
自分の仕事が遅れ、同僚に負担をかけ、職場で気まずい思いをする。休みを取るたびに申し訳なさを感じるようになる人もいるでしょう。
ただし、親の介護を理由に仕事を休むことを、すべて自分の有給休暇で対応する必要はありません。
介護には、法律で定められた休暇や休業の制度があります。まずは、その違いを知っておきましょう。

有給を使い切る前に知っておきたい3つの制度
1. 介護休暇は、通院付き添いや手続きにも使える
介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や世話をするために取得できる休暇です。
対象となる家族1人につき、年度で5日まで、対象家族が2人以上の場合は10日まで取得できます。
たとえば、次のような場面で利用が考えられます。
- 親の通院に付き添う
- 介護サービスの手続きをする
- ケアマネジャーとの打ち合わせに参加する
- 介護に関する役所の手続きをする
時間単位で取得できる制度もあります。半日や1日休むほどではない用事にも使いやすい制度です。
ただし、会社の制度や労使協定によって取り扱いが異なる場合があります。取得方法や申請期限は勤務先に確認しておきましょう。
2. 介護休業は、まとまった期間が必要なときに使う
介護休業は、家族の介護体制を整えるためなど、まとまった期間が必要なときに利用できる制度です。
対象家族1人につき、通算93日まで、3回に分けて取得できます。
たとえば、親が退院した直後に介護サービスを探したり、自宅での生活環境を整えたりする場面が考えられます。
ここで注意したいのは、介護休業は自分がずっと介護をするためだけの休みではないということです。
むしろ、休業中に介護サービスや支援体制を整え、仕事に戻った後も介護が続けられる状態を作ることが重要です。
3. 介護休業給付金で収入減少を補える場合がある
介護休業中は、勤務先から給与が支払われない、または減額されることがあります。
その場合、一定の要件を満たせば、雇用保険から介護休業給付金を受け取れる可能性があります。
給付額は原則として休業開始時賃金の67%相当です。
ただし、支給には雇用保険の加入期間などの条件があり、休業中の賃金によっても支給額が変わります。
「休むと収入が大きく減るから無理」と決めつけず、勤務先の担当部署やハローワークに確認してみましょう。
会社に介護のことを伝えたくない場合は?
介護の事情を職場に知られたくない人もいるでしょう。
「親の介護で仕事に支障が出ていると思われたくない」
「昇進や評価に影響しないか心配」
「同僚に迷惑をかけていると思われたくない」
こうした気持ちは自然なものです。
ただ、何も伝えずに急な欠勤や早退を繰り返すと、かえって仕事の調整が難しくなることがあります。
最初から家庭の事情を細かく説明する必要はありません。まずは、仕事の調整に必要な範囲で伝える方法があります。
たとえば、上司には次のように伝えられます。
「家族の通院や介護に関する対応が必要になることがあり、今後、短時間の休暇をお願いする可能性があります。できるだけ事前に予定を共有しますので、取得方法について相談させてください」
これなら、親の病状や家庭の事情を詳しく話さなくても、必要な相談を始められます。
毎回会社を休まなくても済むようにする方法
制度を知っておくことは大切ですが、そもそも仕事を休む回数を減らせれば、それに越したことはありません。
ここからは、親の用事を家族だけで対応しないための方法を紹介します。
通院は毎回付き添わず、必要な場面を見極める
親が一人で病院へ行ける状態なら、毎回付き添う必要があるとは限りません。
予約の確認や移動手段の確保だけ手伝い、診察そのものは本人に任せる方法もあります。
一方で、認知機能の低下がある、医師の説明を理解するのが難しい、転倒の危険があるといった場合は、付き添いや別の支援が必要です。
病院側にも相談し、本人だけで受診できるか、家族が同席すべき場面はどこかを確認しておきましょう。
兄弟がいるなら、仕事を休む人を固定しない
兄弟がいるのに、なぜか自分ばかりが仕事を休んでいる。
こうした状況は珍しくありません。
ただ、「自分の方が実家に近いから」「長男だから」といった理由だけで、すべてを引き受ける必要はありません。
たとえば、次のように分担できます。
- 通院の付き添いは、都合がつく人が担当する
- 病院の予約や連絡は別の兄弟が担当する
- 介護費用の管理や支払いは担当者を決める
- 緊急時の連絡先を兄弟で共有する
仕事を休むことが難しい人は、手続きや連絡など別の役割を担う方法もあります。
大切なのは、誰か一人が仕事を犠牲にする形を当たり前にしないことです。
介護サービスや家事支援を利用する
親の生活を支えるために、毎回子どもが実家へ行く必要があるとは限りません。
介護保険の訪問介護や通所介護など、親の状態に応じて利用できるサービスがあります。
また、介護保険の対象にならない家事や掃除などについては、民間の家事代行サービスを検討する方法もあります。
「親のことだから家族がやるしかない」と考えると、仕事も家庭も自分の時間も削られてしまいます。
家族が対応することと、外部に任せることを分けて考えてみましょう。
介護のために仕事を辞めるのは、最後に考えたい
親の介護が始まると、仕事を続けること自体が難しく感じる時期もあります。
しかし、介護離職をすると収入が減るだけでなく、再就職が難しくなる可能性もあります。
親の介護は、数か月で終わるとは限りません。長期化することも考えておかなければなりません。
だからこそ、仕事を辞める前に、次の順番で考えてみてください。
- 介護休暇や介護休業など、利用できる制度を確認する
- 地域包括支援センターに相談する
- ケアマネジャーや介護サービス事業者と支援体制を考える
- 兄弟や親族と役割を分担する
- 家事や移動など、外部に任せられる部分を探す
介護を続けるために、自分の仕事や生活をすべて犠牲にする必要はありません。
まとめ:有給を使い切る前に、家族以外の力を借りよう
親の介護で仕事を休むことが増えてきたら、まずは介護休暇や介護休業などの制度を確認してみましょう。
通院や手続きには介護休暇、まとまった準備期間が必要なら介護休業というように、状況に応じて使い分けることができます。
そして、もう一つ大切なのは、仕事を休まなければならない用事そのものを減らすことです。
兄弟で役割を分ける、介護サービスを利用する、家事を外部に任せる。こうした工夫を組み合わせれば、家族だけで抱えていた負担を減らせる可能性があります。
親を大切にすることと、自分の仕事や生活を守ることは両立できます。
「自分が休めば何とかなる」という状態を続ける前に、少しずつでも家族以外の力を借りていきましょう。

