親と話していて、「最近、同じことを何度も言うようになったな」と感じる。
電話をしたことを忘れていたり、約束を忘れていたり、以前なら普通にできていたことに時間がかかったりする。
年齢を考えれば、多少の物忘れは仕方ない。
そう思う一方で、
「これって認知症じゃないの?」
と心配になることもあります。
そして、もう一つ困るのが病院です。
本人に「認知症かもしれないから病院に行こう」と言っても、素直に受診してくれるとは限りません。
むしろ、
「そんなことない」
「年を取れば誰だって忘れる」
「病院なんて行かない」
と嫌がられてしまうこともあります。
では、親の物忘れが気になったとき、家族は何から始めればいいのでしょうか。
まず「物忘れがある=認知症」とは限らない
最初に知っておきたいのは、物忘れが増えたからといって、それだけで認知症とは決められないということです。
年齢を重ねれば、誰でも思い出すのに時間がかかったり、新しいことを覚えにくくなったりすることがあります。
一方で、認知症による物忘れでは、体験したこと自体を忘れてしまうことがあります。
例えば、
「朝ごはんのおかずは何だったっけ?」
というのは、食事をしたこと自体は覚えているものの、細かい内容を思い出せないケースです。
それに対して、
「朝ごはんなんて食べてない」
と、食事をしたこと自体を忘れている場合は、少し気になる変化です。
もちろん、これだけで認知症と判断できるわけではありません。
物忘れ以外にも、判断力や理解力の変化、時間や場所が分からなくなる、人柄が変わったように感じるなど、さまざまな変化があります。
そのため、家族が「以前と何か違う」と感じたら、一度相談してみることが大切です。
こんな変化が増えてきたら一度相談してみる
例えば、次のようなことが増えていないでしょうか。
同じ話を何度もする
さっき話したばかりなのに、また同じ話をする。
本人は話したこと自体を覚えていないように見える。
こうした変化が何度も続くようなら、メモしておくとよいでしょう。
物をなくすことが増えた
財布や通帳、鍵などを頻繁に探すようになった。
以前よりも置き忘れが増えている。
場合によっては、「誰かに盗まれた」と周囲を疑うこともあります。
料理や買い物で失敗するようになった
以前は問題なくできていた料理が難しくなった。
買うものを間違える。
同じものを何度も買ってしまう。
こうした変化は、単なる物忘れだけではなく、判断や段取りの部分にも変化が出ている可能性があります。
慣れた場所で迷う
近所のスーパーや病院など、以前から何度も行っている場所なのに道が分からなくなる。
これも気になる変化の一つです。
急に怒りっぽくなった
以前よりも怒りっぽくなったり、周囲への不満が増えたりする。
「性格が変わったのかな」と思ってしまいますが、こうした変化が認知症に伴って現れることもあります。
ただし、これらはあくまで「気になる変化」の例です。
当てはまったからといって、認知症だと決まるわけではありません。
いきなり「認知症の病院に行こう」と言わなくてもいい
ここが家族にとって難しいところです。
本人が自分の物忘れを気にしているなら、
「最近ちょっと気になることがあるから、一緒に病院で相談してみよう」
と伝えやすいかもしれません。
しかし、本人に自覚がなかったり、認知症と言われることを嫌がったりする場合は、いきなり病名を出すことで抵抗されることがあります。
「認知症だから病院に行こう」
という言い方より、
「最近ちょっと忘れることが増えたから、一度先生に相談してみない?」
くらいから始める方法もあります。
例えば、
「健康診断のついでに相談してみよう」
「最近薬のこともあるし、一度先生に聞いてみよう」
「最近ちょっと疲れやすそうだから、一回診てもらおう」
など、本人が受け入れやすいきっかけから話してみる方法です。
本人の気持ちを無視して、家族だけで話を進めないことも大切です。
どこに相談すればいい?
「病院に行ったほうがいいのは分かった。でも、何科に行けばいいの?」
ここで迷う人も多いと思います。
まず候補になるのが、かかりつけ医です。
普段から診てもらっている医師がいるなら、まずそこで相談してみるのも一つの方法です。
必要に応じて、専門の医療機関を紹介してもらえることがあります。
また、もの忘れ外来を設けている医療機関もあります。
認知症について詳しく調べてもらいたい場合には、こうした専門外来を利用する方法もあります。
そして、病院に行くべきかどうかも含めて相談したい場合には、地域包括支援センターも利用できます。
地域包括支援センターは、高齢者の介護や生活、医療などについて相談できる窓口です。
「まだ介護が必要というほどではない」
という段階でも、親の様子について相談できます。
本人が病院に行くのを嫌がったら?
これも珍しいことではありません。
本人からすれば、
「自分は普通に生活できている」
「何も困っていない」
と思っているかもしれません。
そこで家族が、
「最近何回も忘れてるでしょ」
「認知症なんじゃない?」
「だから病院に行って」
と何度も言ってしまうと、親子で言い合いになってしまうことがあります。
そんなときは、いったん「認知症かどうか」という話から離れてみてもいいでしょう。
例えば、
「最近、薬のことがちょっと心配だから先生に聞いてみよう」
「血圧も気になるし、一緒に病院行こうか」
「最近ちょっと疲れてるみたいだから、一回診てもらおう」
など、本人が受け入れやすい理由から受診につなげる方法があります。
厚生労働省の資料でも、本人が受診を嫌がる場合には、かかりつけ医に相談したり、家族と対応を考えたり、本人が受け入れやすい形で受診につなげた事例が紹介されています。
大事なのは、家族が「認知症だ」と決めつけて本人を説得することではありません。
本人が感じている不安や困りごとも聞きながら、どうすれば受診しやすいかを考えることです。
病院に行く前に家族がメモしておくといいこと
受診することになったら、家族も少し準備しておきましょう。
特におすすめなのが、最近の変化をメモしておくことです。
例えば、
- いつ頃から物忘れが増えたか
- 同じ話を何度くらい繰り返すか
- 財布や鍵などをなくすことが増えたか
- 薬を飲み忘れることがあるか
- 買い物で失敗することが増えたか
- 運転や料理に変化があるか
- 道に迷ったことがあるか
- 怒りっぽくなったなど、性格の変化があるか
- 一人暮らしで困っていることがないか
などです。
「最近ちょっと変なんです」
だけでは、医師も状況を把握しにくいことがあります。
具体的に、
「先月から同じ話を何度もするようになった」
「先週、近所のスーパーから帰れなくなった」
「薬を飲んだか分からなくなることが増えた」
など、実際に起きた出来事を伝えられると相談しやすくなります。
本人の前では話しにくい内容があるなら、あらかじめメモを用意しておく方法もあります。
一人暮らしなら「物忘れ以外」も確認しておく
親が一人暮らしをしている場合は、物忘れだけを見ていると分からないこともあります。
例えば、
食事はちゃんと取れているか。
薬は決められた通り飲めているか。
家の中が以前より散らかっていないか。
冷蔵庫の中に同じ食品が大量に入っていないか。
公共料金などの支払いはできているか。
ゴミ出しができているか。
こうした生活の変化も確認してみましょう。
以前の記事でも紹介したように、親の一人暮らしが心配になったときは、まず生活全体を見ることが大切です。
物忘れそのものよりも、
「以前できていたことができなくなっている」
という変化から気づくこともあります。
物忘れが気になったら、家族だけで抱え込まない
親の物忘れが増えてくると、
「まだ病院に行くほどじゃないかな」
「本人が嫌がっているから仕方ない」
と、そのまま様子を見てしまうこともあります。
もちろん、すぐに認知症だと決める必要はありません。
ただ、以前と明らかに違う変化が続いているなら、一度相談してみる価値はあります。
相談先は病院だけではありません。
かかりつけ医に相談してもいいですし、どこに行けばいいのか分からなければ地域包括支援センターに相談することもできます。
「病院に連れていくべきかどうか分からない」
という段階から相談して大丈夫です。
親の物忘れが気になったら、まずやること
最後に、最初にやることを整理しておきましょう。
1.最近の変化を書き出す
「何となくおかしい」ではなく、具体的な出来事をメモします。
2.本人の話を聞く
本人が困っていること、不安に感じていることがないか確認します。
3.受診を急かしすぎない
「認知症だから」という決めつけではなく、本人が受け入れやすい伝え方を考えます。
4.かかりつけ医や地域包括支援センターに相談する
どこに行けばいいのか分からなければ、まず相談窓口に聞いてみましょう。
5.家族だけで判断しない
物忘れにはさまざまな原因があります。
認知症かどうかを家族だけで判断するのではなく、気になる変化が続くなら専門家に相談することが大切です。
親の変化に気づいたとき、いちばん難しいのは「病院に連れていくこと」なのかもしれません。
でも、いきなり大きな決断をする必要はありません。
まずは最近の様子を整理する。
本人と話してみる。
かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみる。
そこから始めれば十分です。
「認知症かもしれない」と一人で抱え込まず、まずは相談することから始めてみましょう。


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