【深掘り】異例の「風味変化」回収!安全性より深刻な物流管理の問題点とは
国民的お菓子「ポッキー」を製造販売する江崎グリコは12月8日、主力商品を含むチョコレート菓子20品目、約600万個を自主回収すると発表しました。
回収の理由は、安全性ではなく、原料であるカカオ豆に香辛料の香りが移り、風味に変化が生じたためです。
このニュースは一見、単なる製造ミスや異物混入とは異なる、物流・保管における品質管理の難しさを浮き彫りにしています。
🚨 盲点だった「カカオ豆と香辛料の同居」
今回の問題は、物流倉庫の改修工事に伴い、一時的にカカオ豆と香辛料という「香り」を持つ原料を同一空間で保管したことが原因とされています。
カカオ豆は、その性質上、周囲のにおいを吸収しやすいという特性があります。
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一般的な問題: 食品工場では、原料同士のにおい移りを防ぐために、保管エリアを厳格に分離するのが基本中の基本です。
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今回の教訓: 一時的な倉庫の改修という「イレギュラー」な状況下で、通常の品質管理基準が適用されなかったことが、今回の大量回収につながりました。
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結論: 安全性(人体への影響)は問題ないとされていますが、消費者が長年愛した「ポッキーの味」が変わってしまったことは、ブランドにとってより深刻な問題です。
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📉 「風味の違和感」が示す消費者との信頼関係
グリコが問題を把握したのは、10月以降に消費者から相次いだ「味が違う」「スパイシーな香りがする」といった「風味に関する問い合わせ」がきっかけでした。
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消費者の鋭敏さ: 数百万個が流通する中で、微妙な風味の変化を即座に感知し、メーカーに連絡した消費者の存在は、ポッキーというブランドがどれだけ「絶対的な味」で信頼されてきたかを物語ります。
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品質の定義の再考: 今回の自主回収は、品質管理が「異物混入を防ぐ」「賞味期限を守る」といった安全性確保だけでなく、「消費者が期待する一貫した風味」を維持することこそが、現代のブランド品質であるという認識を改めて突きつけました。
数々の競合商品がある中で、ポッキーが長年トップセラーであり続けたのは、この「変わらない味」への信頼があったからです。今回の回収劇は、その根幹を揺るがしかねません。
🛡️ 今後の課題:物流のデジタル化と再発防止策
大量生産と全国規模の物流を担う大手食品メーカーにとって、倉庫内の「イレギュラー」な事態を未然に防ぐことは容易ではありません。
今回の教訓から、江崎グリコをはじめとする大手食品メーカーは、以下の対策を加速させる必要に迫られます。
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デジタル管理の徹底: 原料の種類や特性(吸湿性、吸香性など)に基づき、保管場所や混載禁止をAIやデジタルシステムで徹底管理する仕組みの導入。
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物流・品質部門の連携強化: 倉庫の改修や物流ルートの変更といったイレギュラー発生時こそ、品質管理部門が最終チェックを行う連携体制の確立。
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全原料の香り検査: カカオ豆のように香りを吸着しやすい原料については、使用前に第三者機関による精密な香り検査を義務付ける。
江崎グリコは再発防止に向けた「倉庫保管ルールや検査体制の見直し」を表明していますが、この約600万個の回収という事態は、日本の食品産業全体に対し、「物流の安定性」が「商品の品質」そのものであるという重い警鐘を鳴らしました。


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