「仲間が来たと待ってくれた」写真集裏話とクマ被害への願い
女優の吉永小百合(80)が14日、都内で、写真集「吉永小百合」(世界文化社)の刊行記念サイン本お渡し会を開催しました。この写真集は、2024年1月に亡くなった写真家の篠山紀信氏が1972年から1995年にかけて撮影した写真群と、吉永さんが出演した映画全124作品のスチール写真で構成された集大成です。
吉永さんは、世界文化社創立80周年記念企画として、篠山紀信氏の写真を軸に再編集する趣旨に賛同し、自ら1年間をかけて写真を選定するという熱の入れようでした。そのお渡し会で、吉永さんは写真集に収録された一枚の象徴的な写真にまつわる、感動的な裏話を明かしました。
🦢 映画「鶴」を体現した奇跡の一枚
写真集の中には、吉永さんが1988年に主演した映画「鶴」をイメージして撮影された、印象的な写真が収録されています。雪深い冬の風景の中、数羽の鶴がたたずむ雪原に、純白の着物を着た吉永さんが真っすぐに立つ姿は、まさに映画の幻想的な世界観を体現しています。
吉永さんはこの写真の撮影秘話を次のように説明しました。
「映画(鶴)は、新潟県の長岡で撮影したんですね。その写真は映画の撮影が終わってから、篠山さんとご一緒に北海道・釧路の方の鶴居村に行って、川沿いで雪が降り続く中で撮影しました」
心を通わせた鶴たち
撮影地である北海道の鶴居村は、文字通り特別天然記念物のタンチョウヅルが多く飛来することで知られる場所です。吉永さんがそこで体験したのは、動物たちとの奇跡的な交流でした。
「遠くの方に鶴がいて。そうっと鶴の方に近づいて行ったら、逃げないんですよ。仲間が来た、というふうに待っていてくれて、あの写真を撮ることができた。本当に貴重な思い出になりました」
純白の着物をまとい、静かに雪原に立つ吉永さんの姿を、鶴たちが「仲間」として認識し、警戒することなく待っていてくれたというエピソードは、吉永さんの持つ清潔感と慈愛に満ちたオーラが、人間だけでなく動物にも通じた瞬間として、会場に温かい感動を呼びました。
この写真は、単なる記念写真ではなく、吉永さんと自然、そして鶴という特別な存在との間に生まれた、深い共鳴を捉えた芸術的な記録と言えるでしょう。
🐻 鶴との対比で語ったクマ被害への憂慮
鶴との心温まる撮影秘話を語り終えた流れの中で、吉永さんは現在の社会が抱える深刻な問題へと話題を転じました。それは、近年日本国内で多発しているクマによる被害です。
吉永さんは、鶴が警戒せずに自分を受け入れてくれた奇跡の体験と対比させるように、切実な願いを口にしました。
「クマも、そういうふうになってくれたら、良いんですけどね」
<h4>「何とかクマも分かってもらいたい」</h4>
お渡し会後の取材で、吉永さんはさらに具体的な言葉でクマ被害の収束を願いました。
「クマの被害も、とっても多くて、皆さん、苦しんでいるから…何とかクマも、分かってもらいたいわね」
これは、近年、人里近くでの目撃情報や、人的被害が急増している状況、そしてその背景にあるとされる環境の変化やクマの生息域の変動に対する深い憂慮から来るものです。クマと人間との間に横たわる緊張関係が、鶴との平和な交流のような理解と共存の関係へと変わってほしいという、吉永さんの平和的な願いが込められています。
吉永さんの発言は、単なる女優のコメントではなく、長年、自然や平和をテーマにした作品に携わってきた社会的な発信力を持つ人物としての、切実なメッセージとして受け止められました。鶴居村での経験は、人間と動物が共存できる可能性を示唆する一方で、現代の深刻なクマ被害は、その共存の困難さを突きつけている状況を浮き彫りにしています。
📚 永遠の輝きを凝縮した写真集
写真集「吉永小百合」は、2024年1月に惜しまれつつ亡くなった偉大な写真家、篠山紀信氏との長年にわたる共同作業の記録でもあります。吉永さんは59年の本格デビュー以来、公開中の最新作「てっぺんの向こうにあなたがいる」まで、124本もの映画に出演しており、その活動の軌跡は日本の映画史そのものです。
今回の写真集には、吉永さんが女優として、また一人の女性として歩んできた半生が、篠山氏の鋭い感性と独自の視点によって捉えられた貴重な写真群とともに収められています。吉永さん自身が選び抜いた写真は、彼女のキャリアの変遷と、時代を超えて変わらない透明な美しさ、そして芯の強さを改めて示しており、ファンにとってはまさに必携の保存版となるでしょう。

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