森記念財団都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング2025」で、東京が調査開始以来初めて2位に浮上しました。絶対王者ロンドンに次ぐ快挙に見えますが、その内訳を解剖すると、素直に喜べない「安いニッポン」の現実と、物価高に苦しむニューヨークの自滅という、皮肉な構図が浮かび上がってきます。
順位アップの主因は「安さ」?経済分野は12位へ後退の衝撃!
大手が「東京2位、過去最高」と報じる裏で、見逃してはならないのが「経済分野」のランクダウン(10位→12位)です。
東京がスコアを伸ばしたのは「居住」と「文化・交流」分野。特に「居住」で首位になった要因は、円安による「物価水準の低さ」です。つまり、東京の実力が飛躍的に向上したというよりは、「世界から見て、安くて住みやすく、遊びに行きやすい都市になった」という側面が強いのです。
一方で、ビジネスの根幹である「賃金水準」や「人材確保」では評価を落としています。「稼げる都市」としての魅力は薄れ、「消費するには最高の都市」へと変質しつつある。これが東京2位のリアルな正体です。
ニューヨーク陥落は「成功の代償」?家賃が高すぎて誰も住めない!
不動の2位だったニューヨークが3位に転落した理由は明確で、「インフレによる窒息」です。経済分野では依然として圧倒的1位ですが、居住分野では48都市中44位と、ほぼ最下位に沈みました。
物価と家賃があまりに高騰し、普通の生活が営めないレベルに達していることが足を引っ張りました。11月の市長選で生活費対策を掲げたマムダニ氏が当選したのも、この市民の悲鳴を裏付けています。東京の躍進は、この「NYの自滅」による敵失という側面も否めません。
大阪が18位へ急上昇!万博効果は「ロンドンの奇跡」を再現できるか?
日本国内で注目すべきは、前年35位から18位へと大躍進した大阪です。大阪・関西万博の開催により、インフラ整備や海外からの注目度が劇的に向上しました。
報告書では、2012年五輪を機に首位を盤石にしたロンドンの例を挙げていますが、課題は「万博後」です。一過性のイベントバブルで終わらせず、整備されたインフラをビジネスや居住の質にどう転換できるか。大阪の真価が問われるのは2026年以降でしょう。
「空港まで最速」の福岡!一点突破の強さが光る
40位に入った福岡の健闘も見逃せません。「空港アクセス時間の短さ」で世界首位を獲得しました。総合力では大都市に及びませんが、特定の利便性で世界トップに立つという「一点突破」の戦略は、他の中核都市にとっても生き残りのヒントになります。
まとめ:私たちは「安くて楽しい国」でいいのか?
今回のランキングは、日本の「観光立国」としての成功を証明した一方で、「経済大国」としての地位低下を突きつける結果となりました。
「世界中の人が遊びに来たい街」にはなりましたが、「世界中の優秀な人が働きに来たい街(高い給料がもらえる街)」からは遠ざかっています。この2位という順位を、単なる祝賀ムードではなく、日本の立ち位置が変わってしまったことへの警鐘として受け止めるべきかもしれません。
