世論調査は好意的だが…
TBS・JNNが10月4~5日に実施した世論調査では、「高市早苗新総裁に期待する」が66%、「期待しない」が26%という結果が出ています。
一方、自民党の信頼回復については、「つながると思う」が40%、「つながらないと思う」が48%と、やや懐疑的な見方も多く出ています。
この結果から読み取れるのは、国民の多くが「女性初の総裁」という象徴性や期待感を持ちつつも、過去の政権運営や政治家への信頼性に対する慎重さを捨てきれていないということです。
また、共同通信の別の世論調査では高市氏に「期待する」と回答した人が68%に上り、同時に「裏金議員の起用反対」が77%に達しているというデータも報じられています。
これらの数値は、高市新内閣・自民党新体制への期待と同時に、過去の政治スキャンダルや“不透明さ”への警戒感が根強く残っていることを示唆しています。
“裏金議員”起用問題──高市氏のスタンスと野党・世論の反発
高市氏の主張:裏金問題は「決着済み」
高市氏は総裁選期間中から、一部議員の“裏金問題”起用をめぐる批判に対し、「議席を得られた方については再処分を考えていない」「人事には影響しない」と明言していました。
この立場は「過去の問題は清算済み/現在の議員としての権利を尊重すべき」という主張ですが、野党側からは「過去の闇がよみがえる」「政治の悪い慣習が復活する危険性がある」との牽制の声も上がっています。
立憲民主党の安住幹事長は、「自民党が“生まれ変わる”のではなく、裏金議員が復活し、昔の悪い政治が戻ってくる」と強く批判しました。
起用の可能性と限界
実際の人事においては、以下のような力学が働く可能性があります:
-
派閥均衡・支持団体との妥協:自民党内では派閥力学が強く、人事はバランス重視になりがちです。
-
政権安定のための強硬路線:高市氏の保守的・右派的なスタンスを重視する支持層への配慮から、従来型の議員を一定程度登用する可能性。
-
対外イメージとの整合性:国民やメディアの反発を招くような起用には慎重にならざるを得ず、“裏金議員”の起用は最小限に抑えられる可能性も。
-
内部監視・説明責任強化:万一起用せざるを得ない場合でも、透明性の確保や説明責任を果たす体制を整えることで反発の抑制を図ることも想定されます。
ただし、「裏金問題は決着済み」との主張には批判が根強く、起用が“既定路線”扱いされれば、世論や野党の反発が政権運営を重荷にするリスクは高いでしょう。
人事の焦点:旧派閥 vs 新布陣、新顔登用の可否
高市氏は総裁選後、共に戦った候補者たちを「全員に活躍していただく」と表明していますが、実際のポスト配分は各派の調整がカギとなります。
注目される人事候補には、以下のような名前が挙がっています:
-
小林鷹之氏:経済安全保障担当などで存在感がある。要職起用の可能性。
-
茂木敏充氏:外務大臣など外交ポストの候補として名前が挙がる。
-
林芳正、小泉進次郎:両者の取り扱いが今後の“顔ぶれ刷新”の指標になりそう。
また、「旧政治家」「既存派閥」の顔ぶれが目立ちすぎると「変化なき政権」として批判が出かねません。そうした意味で、高市氏がどこまで“新顔・異色人材”を起用できるかが、政権の新鮮さ・信頼回復の鍵になるでしょう。
自公連立は安定継続か、それとも揺らぎか
自民党は従来、公明党との連立を基盤としてきましたが、高市政権下でその構図に変化の兆しもあります。
-
高市氏が強硬保守的な政策スタンスを打ち出せば、公明党との摩擦を生む可能性。
-
逆に、公明党との調整を重視して軟化した政策を採るなら、支持基盤からの反発も予想されます。
-
さらには、より大きな連立構想(例えば他の保守政党との協力強化や与党再編説)も水面下で動く可能性があります。
ただし、総選挙を控える政権としては「安定性」が重視されるため、いきなり大きな連立軸の転換を図るのはハイリスクと判断される可能性が高いでしょう。
リスク要因と政権の命運を分ける“地雷”
いくつかのリスク要因が、高市政権を“短命政権”と化す可能性を秘めています。東洋経済オンラインでも「地雷原」と題した分析が出ています。
主なリスクは次の通りです:
-
物価高・生活実感政策の不全
多くの国民が高市氏に期待する政策は「物価高対策」です。もしこれが空振りになると信頼回復は難しい。 -
派閥抗争・内部対立の激化
人事・政策をめぐって党内抗争が表面化すれば、政権基盤が揺らぐ。 -
野党・マスコミの厳しい監視・批判
過去の政治スキャンダル、言動・発言への批判、政策の矛盾点などが攻めどころになる。 -
選挙での民意反映
衆参議員とも少数与党という状況下で、支持率低下がそのまま議席・政権持続性に影響を与える。
今後のポイント
項目 | 注視すべき点 |
---|---|
人事布陣 | 派閥バランス、新顔起用、裏金疑惑議員の扱い |
政策実行力 | 物価対策、社会保障、外交・安全保障 |
与党連携 | 公明党との連携強化 or 軌道変更の動き |
支持率の推移 | 世論調査変化、地方票・若年層支持率の動向 |
選挙タイミング | 衆院解散・総選挙の見通しと、解散までに成果を出せるかどうか |
まとめ:期待の度合いと試練の始まり
高市早苗氏の総裁就任は、政界にとって象徴的かつ転換点となり得る出来事です。「期待する」66%という高い支持感は、象徴力と初動の期待値の表れでしょう。
しかしその裏には、「期待しているが信頼回復にはどうか」「裏金起用への不安」「人事・政策が伴わなければ空虚になりうる」というシビアな視線も存在しています。
政権の“顔ぶれ”と“政策実行力”、そして野党・国民との向き合い方が、この政権の命運を左右するでしょう。
今後の人事発表、内閣布陣、各政策発表は、一つひとつがメディア・国民の注目対象になります。