17日夜、第215回臨時国会の閉会を受け、高市早苗首相が官邸で記者会見を行いました。補正予算の成立を「国民との約束」と強調しつつも、焦点となっている衆院解散については「考えている暇がない」と一蹴。連立を組む日本維新の会との距離感や、大手が報じきれない「対中・対米外交」の微妙な温度差、そして国民の生活に直結する「103万円の壁」の最新状況まで、高市政権の現在地を徹底解剖します。
「年収の壁」に新展開!物価連動型の基礎控除引き上げを明言!
今回の会見で最も国民の関心を集めたのは、いわゆる「103万円の壁」への対応です。高市首相は、基礎控除を「物価に連動した形でさらに引き上げる」税制措置を与野党間で最終調整していると明言しました。
これは、単に控除額を固定で引き上げるのではなく、インフレ局面でも手取りが減らない仕組みを導入しようという大胆な試みです。大手が触れないポイントは、これが「国民民主党」などの野党案を一部取り込みつつ、自民党内の財務族を抑え込むための「高市流の妥協と突破」の産物である点です。26年度予算案にどこまで具体的な数字が盛り込まれるか、26日の閣議決定が正念場となります。
「解散は考えていない」の裏に潜む、維新との危うい連立バランス!
記者から執拗に問われた衆院解散について、首相は「目の前の課題が山ほどある」として否定しました。しかし、永田町で囁かれているのは、連立相手である「日本維新の会」との足並みの乱れです。
今回の補正予算成立は維新の協力があってこそですが、連立拡大については「相手方の意向もある」と言葉を濁しました。大手が報じない視点として、自民党内には「維新カラーが強まりすぎる」ことへのアレルギーが依然として強く、高市首相は党内保守派と連立相手の間で極めて危ういバランスの上に立たされています。解散を打てないのは「暇がない」からではなく、今打てば「連立の枠組みが崩壊する」という恐怖があるからに他なりません。
「存立危機事態」の火消しに奔走!中国を刺激し続ける「高市外交」のジレンマ!
外交面では、中国との「戦略的互恵関係」を強調しつつも、「存立危機事態」に関する自身の強気な答弁については「従来の立場を変えるものではない」と釈明に追われました。
高市首相は「対話にオープン」と繰り返しましたが、中国側は高市政権の防衛力増強路線に強い警戒感を示しています。来年中の「安保3文書」改定に向けた議論を加速させる方針も示しており、これは事実上の「戦える日本」へのギアチェンジです。早期の日米首脳会談を調整中としていますが、トランプ政権(あるいは次期政権)とのパイプ構築を急ぐあまり、中国との緊張関係が「偶発的な衝突」を招かないか、外交の舵取りはかつてない難局を迎えています。
「クマ被害対策」に前倒し予算!地方票を意識した「生活密着型」の演出!
意外なほど時間を割いたのが「クマ被害対策」です。26年度予算の前倒し執行を表明し、冬眠明けの春以降も「切れ目ない対策」を行うと語りました。
なぜ一国の首相が会見でクマに触れるのか。そこには、都市部での支持が伸び悩む中、地方の保守地盤を固め直したいという政治的思惑が見え隠れします。全国各地で相次ぐ被害を「国家的な課題」に格上げすることで、地方自治体への強力なバックアップをアピールし、政権の支持基盤を死守しようとする狙いがあります。
「企業・団体献金」は議論の先送りか?民主主義の根幹を問う声!
政治資金問題の火種である「企業・団体献金」については、「各党とよく議論すべき」と述べるに留めました。これは事実上の「現時点での禁止否定」であり、野党からの追及をかわす定型文です。
高市首相にとって、自身の政治資金の透明性は「強いリーダーシップ」の源泉ですが、党全体の構造改革に踏み込むのはまだ先の話。2026年度予算案の信認を得るまでは、党内の反発を招く抜本的な政治改革には手を付けられないというのが本音でしょう。
高市政権は、経済(年収の壁)と安全保障(安保3文書)の両輪で突き進もうとしていますが、その足元には野党の協力と党内の内紛という爆弾を抱えています。この「高市旋風」が本物の変革となるのか、それとも1月の通常国会で失速するのか。
今後も注目していきます。
