■高市政権、21.3兆円の大型経済対策を決定へ
2025年11月20日、高市早苗政権の経済対策の全体像が判明しました。今回示された補正予算の歳出と大型減税の効果額は 合計21.3兆円。地方自治体や民間を含む事業規模は 42.8兆円 にのぼり、コロナ後の23年度以降では最大級の規模です。
この数字は、単なる「景気刺激策」ではなく、高市政権が掲げる“財政拡張路線”を強く象徴するものとなりました。
政権発足後、高市首相は一貫して「家計を守り、成長投資を惜しまない」姿勢を示してきましたが、今回の経済対策はその方向性をより鮮明にした形です。
■今回の経済対策の柱
政府は対策全体を以下の3つの重点領域に分類しています。
●① 生活安全保障・物価高対策:11.7兆円
物価上昇は2024年後半〜25年にかけて家計を強く圧迫しており、その反動を抑える狙いがあります。
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食料品・日用品の値上がりへの家計支援
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ガソリン・電気・ガスの負担軽減
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子育て世帯向け支援
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地方の自由度の高い交付金2兆円
などがここに含まれます。
特に自治体が独自に配分できる「重点支援地方交付金」を増額し、各地域の実情に合わせた使途を可能にする点が特徴です。
●② 危機管理投資・成長投資:7.2兆円
高市政権は「危機に強い国家、成長を取り戻す経済」の両立を掲げています。
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半導体関連投資
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燃料・エネルギー安全保障
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インフラの強靱化
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研究開発支援
など、中長期的な成長につながる分野への投資が含まれています。
●③ 防衛力・外交力強化:1.7兆円
緊張が高まる国際情勢において、防衛費の機動的な積み増しや人員体制の強化、さらには国際協力も含まれます。
■予備費7000億円増額の意味
特筆されるのが、内閣の裁量で使える 予備費7000億円 の積み増しです。
用途として示されているのは以下:
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自然災害対応
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物価高の再燃
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クマ被害拡大(農林水産・地域安全上の問題)
クマ被害に予備費が明確に言及されるのは異例で、地方の安全対策を政権が重視している姿勢が読み取れます。
■大型減税の中身
今回の経済対策で注目されるのが、2.7兆円規模の大型減税 です。
●① 「年収の壁」引き上げ(1.2兆円)
共働き世帯などに影響する年収制限を大幅に緩和し、働き控えをなくす目的があります。
●② 暫定税率の廃止(1.5兆円)
ガソリン・軽油に上乗せされてきた“暫定税率”を撤廃。
これは家計のガソリン代負担を軽減するだけでなく、物流コストの改善にも効果が及びます。
政権の「実質賃金が伸びていなくても、可処分所得を増やす」という考えの象徴とも言えます。
■子育て世帯支援の強化
与党で連立を組む日本維新の会が強く要望していた 電気・ガス代の追加補助 も盛り込まれました。
さらに、立憲民主党・公明党が求めていた子育て支援策として、
●「子育て応援手当」
18歳までの子ども1人につき2万円を給付
が加わり、超党派的な支援策となりました。
子ども関連支援は、政権が「少子化対策」を重要なテーマに据えている証拠でもあります。
■高市政権の財政姿勢はなぜ“拡張的”なのか
今回の経済対策は、明らかに 大きな政府・積極財政型 の方向です。
なぜ、この路線なのか?背景を整理します。
●理由① 物価高が長期化
2024年から続く物価高は、欧米よりも「賃金追いつかない状態」が顕著。
可処分所得を回復させるためには、減税と補助金が即効性を持つ。
●理由② “新成長戦略”の柱が投資
半導体・先端技術・エネルギー安全保障など、日本の競争力を底上げするための国家投資は急務。
●理由③ 強い首相主導の財政運営
高市首相は以前から
「財政出動を恐れて成長を逃すべきではない」
と発言しており、財務省の緊縮路線とは距離を置くスタンス。
■政治的側面:少数与党での合意形成
現在、政権は過半数ギリギリであり「ねじれ」ほどではないものの、政策合意には他党の理解が不可欠です。
今回の経済対策には、
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維新:電気ガス補助の強化
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公明:子育て支援
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立憲:家計支援
と、各党の求めに沿う要素が盛り込まれています。
これは政策として機能させるだけでなく、「政権の安定運営」という政治的目的も含まれています。
■家計にどれだけ影響するのか
今回の経済対策が家計に与える影響を整理します。
●メリット
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ガソリン代の負担減(暫定税率廃止)
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光熱費補助の延長
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子育て世帯は2万円の一時給付
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低〜中所得層は年収の壁緩和で手取りが増える可能性
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物価高への補助が続く
●課題
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一時的な支援が多い
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国債発行が増える可能性
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中長期的な財政負担
どの程度の「実感」が伴うかは今後の国会審議でも争点になるでしょう。
■経済対策の成立スケジュール
政府は現在開会中の臨時国会で、補正予算案の成立を目指しています。
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11月21日:閣議決定
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11月末〜12月:衆参審議
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年内:成立の見込み
2026年1月からの施策も多いため、年内成立が不可欠と言えます。
■カカニュース視点:高市政権の“本気度”はどこにある?
今回の経済対策で特に象徴的だったのは「生活支援」と「成長投資」の両立を強調した点です。
実は高市首相は若いころから、
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科学技術政策
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エネルギー安全保障
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情報通信政策
への熱量が強く、これまでの政治活動の軸でもありました。
今回の経済対策は、まさにこれまでの“高市カラー”が全面に出た内容と言えます。
■まとめ
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経済対策の実質規模は 21.3兆円
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生活安全保障・成長投資・防衛の3本柱
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暫定税率廃止・年収の壁引き上げなど 大型減税2.7兆円
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子育て応援手当など超党派的な政策も
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高市政権は「積極財政路線」を明確化
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政治的には他党との合意形成も意識した構造
高市政権の「拡張財政」はメリットとリスクを併せ持ちますが、日本経済が転換点を迎える中で、今回の政策がどれだけ効果を生むのか、今後も注目されます。

