2025年9月初旬、サントリーホールディングスの会長を務めていた新浪剛史氏をめぐる捜査が世間を大きく揺るがしました。
米国から輸入されたサプリメントに違法成分が含まれていた疑いで自宅が家宅捜索され、その後、責任を取る形で会長を辞任したのです。
この出来事はサントリーの経営やブランドイメージに影響を及ぼすとみられましたが、意外にも株式市場では「プラス材料」と受け取られ、株価は急騰しました。
本記事では事件概要を整理したうえで、サントリー株価の最新動向を詳しく解説します。
事件の概要
家宅捜索の経緯
8月22日、福岡県警は麻薬取締法違反(輸入)の疑いで新浪氏の自宅を家宅捜索しました。
対象となったのは米国から送られたサプリメント。
検査の結果、大麻由来成分のTHCが基準値を超えて含まれている可能性が指摘されたためです。
違法薬物は未発見
しかし、自宅から違法薬物そのものは見つからず、尿検査でも陰性。
新浪氏自身は「適法と考えて購入した」と説明し、違法性の認識はなかったと主張しています。
サントリー会長辞任
サントリーホールディングスによれば、協議を重ねる中で、9月1日に新浪氏自身から「一身上の理由で役職を辞任したい」との申し出があり、会社側がこれを受理したとされています。
違法性が確定していない段階ではありますが、サントリーホールディングスは「認識の欠如が経営トップとして不適切」と判断し、9月1日付で新浪氏の申し出を受理。
新浪氏自身が一身上の理由で辞任を申し出たが、実は背景には取締役会の説得による辞職要請があった。

会社側の立場
サントリーは「問題のサプリはグループの商品ではなく、会社活動と一切関係がない個人的購入である」と強調。
企業としての責任を回避しつつ、ガバナンス強化に努める姿勢を見せています。
株式市場の反応
株価はまさかの上昇
辞任発表翌日の9月2日、東京証券取引所で取引されたサントリー食品インターナショナル(証券コード:2587.T)の株価は、前日比+135円(+2.94%)の4725円まで上昇しました。
事件発覚によるブランドイメージ悪化を懸念する声もありましたが、市場はむしろ「ガバナンスが機能している」と評価したと考えられます。
経営トップの交代により混乱が長引かず、リスクが限定的だと受け止められたわけです。
株価の詳細データ
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終値:4725円(+135円)
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値幅:4524円~4830円
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時価総額:約1.4兆円
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PER(株価収益率):約16倍
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配当利回り:約2.7%
過去52週間のレンジは4442円~5602円で、依然として下限寄りの水準ですが、短期的な反発力は確認できました。
なぜ株価は上がったのか?
1. ガバナンス評価
事件発覚からすぐに辞任に至ったことで、「企業統治が迅速に働いている」との印象を投資家に与えました。
これは、リスクを早期に遮断したとみなされるプラス要因です。
2. 事業への直接影響は限定的
問題となったサプリメントはサントリー製品ではなく、企業活動と無関係。
収益やブランドへの直接的ダメージは軽微と判断されています。
3. 配当・業績の安定感
サントリー食品インターナショナルは飲料事業を中心に堅調な業績を維持しており、配当利回りも2.7%前後と投資妙味があります。
中長期投資家にとって「安定株」としての魅力が意識された側面もあります。
投資家へのポイント
短期的な材料
今回の株価上昇は短期的には「安心感の買い戻し」として位置づけられます。
報道に過敏に反応して売られた分を、辞任によるリスク回避期待で買い戻したとも言えるでしょう。
中期的な視点
ガバナンスの強化を示したことは中期的にプラス材料です。
ただし、経営体制の再編や新しい会長人事によって方針がどう変わるのか、今後の動向次第では再び株価が揺れる可能性もあります。
長期投資家にとって
飲料事業のグローバル展開、健康志向商品への注力、安定した配当政策など、サントリーの長期的な強みは揺らいでいません。
むしろ今回の一件で「ガバナンスに厳しい会社」というイメージが強まれば、海外投資家からの評価向上にもつながる可能性があります。
筆者の視点
事件そのものは残念なニュースであり、企業トップの行動として批判を免れないでしょう。
しかし、株式市場は冷静に「会社の価値」に基づいて判断を下しました。
筆者としては、今回の株価上昇を過度に楽観視するのではなく、「ガバナンスをどう制度化していくか」に注目すべきだと考えます。
個人の不祥事を契機に、会社全体の透明性や危機対応力が高まるのなら、それは長期的に株主に利益をもたらすでしょう。
まとめ
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新浪剛史氏は違法サプリ輸入疑惑で自宅を家宅捜索され、会長を辞任
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違法薬物は発見されず、本人も関与を否定
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サントリー株価は翌日約3%上昇、市場はリスク遮断を評価
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中長期的にはガバナンス強化が投資家心理にプラスに働く可能性
「事件と株価」を切り離して考えるのではなく、両者を結びつける視点を持つことが、今後の投資判断にも役立つでしょう。
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