2025年の日本列島は、過去に類を見ない猛暑に見舞われています。
気象庁によると、8月上旬の時点で全国の観測地点のうち120か所以上で気温が35度を超える猛暑日を記録。
中には40度に迫る異常高温の地域もあり、「もはや災害レベル」との声も聞かれています。
こうした厳しい気象状況を受けて、企業の間では“働き方の見直し”が急速に進みつつあります。
時短勤務導入の企業が続々と
特に注目されているのが、猛暑時間帯の就業を避けるために「時短勤務」や「シフト変更」を導入する企業の増加です。
例えば都内に本社を置くIT企業「エンテック・ソリューションズ」は、2025年8月から始業時間を通常の午前9時から早朝7時に繰り上げ、午後2時には業務を終了する「サマータイム勤務制」を導入しました。
同社の担当者は、「社員の健康と生産性の両立を図るための措置。午後の気温上昇を避けることで、業務効率も向上している」と語ります。
また、製造業の一部では午後の作業を中止し、夜間や早朝にシフトを分散させるなどの動きも見られます。
「クールワーク」という新たなトレンド
こうした働き方の変化は「クールワーク」とも呼ばれ、政府や自治体も推進に乗り出しています。
経済産業省は、企業に対して「気温35度以上が予想される日は、柔軟な勤務体制を推奨する」旨の通知を出しており、今後、労働政策の見直しにもつながる可能性があると指摘されています。
また、在宅勤務との併用によって、移動中の熱中症リスクを軽減する企業も増加中。
「出社不要日」や「オンライン会議の推奨」といった措置も定着しつつあり、従来の“オフィス前提”の働き方に大きな転機が訪れているのです。
時短勤務で生産性は下がらない?
気になるのは「時短による業務への影響」ですが、実際には“逆に効率が上がった”という声も少なくありません。
特にホワイトカラー業種では、短時間で集中して働く環境が整うことで、ダラダラと長時間働くよりも生産性が高くなる傾向が見られます。
実際、ある都内の広告代理店では「午後3時以降の会議廃止」や「メール対応は午前中のみ」といったルールを設けた結果、社員の残業時間が激減し、業績も前年比で5%上昇したというデータが公表されています。
中小企業には課題も
一方で、こうした取り組みは大企業や一部の柔軟な業種に限られる傾向もあります。
製造や建設、接客業などでは「時短が難しい」「交代勤務制の調整が困難」などの課題が山積しており、社会全体に普及するにはまだ時間がかかるという見方もあります。
また、時短に伴う給与調整や業務の再配分、業績への影響などを懸念する声もあり、導入には慎重な企業も多いのが現状です。
夏の働き方は“選べる時代”へ?
今後は、企業が社員の健康と働き方の柔軟性をどう両立させるかが大きな課題となりそうです。
すでに一部では「夏限定の勤務スタイルを社員が自由に選べる制度」や「冷房完備の“サテライトオフィス”」の導入を進める企業も現れており、2025年の猛暑が日本社会全体の労働環境を見直す“契機”となる可能性もあります。
「夏は働き方を変えるのが当たり前」という時代が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。