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【京都】バトン指導者に懲役6年!18歳教え子への性的暴行

教え子への性的暴行、バトントワリング元指導者に実刑判決

バトントワリングの元指導者という立場を利用し、教え子の男子選手に性的暴行を加えた罪などに問われていた男に対し、京都地方裁判所は2025年12月15日、懲役6年の実刑判決を言い渡しました。スポーツ指導者による性的虐待という、極めて悪質な事件に下された判決は、スポーツ界全体の指導者の倫理安全対策のあり方に、重い問いを投げかけるものです。

実刑判決を受けたのは、バトントワリングの元指導者である小城桂馬被告(41)です。小城被告は、2023年2月から3月にかけての期間、京都市内の自身の自宅マンションで、当時18歳だった教え子の男子選手に対し、性的暴行を加えたほか、服の中に手を入れるなどのわいせつな行為をしたとして、強制性交罪などに問われていました。



権力関係を利用した卑劣な犯行

事件の背景には、指導者と教え子という絶対的な権力関係がありました。バトントワリングという競技において、指導者は技術指導を行うだけでなく、選手の進路や精神面にも大きな影響力を持つ立場にあります。被害者の男子選手は、この指導者との関係性の中で、小城被告の自宅に呼び出され、抵抗できない状況下で犯行に及ばれたとされています。

これまでの裁判において、小城被告は「被害者が抵抗できない状態だとは思っていなかった」などと述べ、一貫して無罪を主張していました。指導者という立場でありながら、被害者の状況に対する認識の甘さ、あるいは意図的な無視ともとれるこの主張は、社会的な批判を浴びていました。

一方、検察側は、「被害者との関係性を利用しており、犯行は極めて悪質である」と厳しく指摘し、懲役7年を求刑していました。検察側は、指導者という地位を利用した犯行は、被害者の精神に深刻なトラウマを与え、その後の人生に多大な影響を与えることから、厳罰が必要であると主張しました。


判決の認定と「抗拒不能」の判断

15日の判決で、京都地裁の裁判長は、小城被告の無罪主張を退けました。判決理由の中で裁判所は、「被害者の証言は、具体的かつ詳細であり、その内容に不自然な点がないことから、信用できる」と認定しました。その上で、「性的暴行の事実は認められ、被害者が当時、心理的・物理的に抵抗することが不可能な抗拒不能の状態にあったことは明白である」と結論づけました。

この「抗拒不能」の認定は、強制性交罪の成立において重要な要素であり、裁判所が指導者と教え子という権力関係が被害者の抵抗を著しく困難にしたと判断したことを示しています。最終的に、京都地裁は小城被告に対し、検察側の求刑(懲役7年)に近い懲役6年の実刑判決を言い渡しました。

実刑判決は、被告人が刑務所に収監されることを意味し、事件の悪質性、そして被害者が受けた精神的・肉体的被害の大きさを司法が重く見た結果と言えます。

スポーツ界に蔓延る指導者ハラスメントの問題

今回のバトントワリング元指導者による事件は、近年、日本のスポーツ界で深刻化している指導者によるハラスメント性的虐待の問題を再び浮き彫りにしました。「体罰」「暴言」といったパワーハラスメントだけでなく、指導者による立場を利用した性的加害は、被害者の選手生命や人生そのものを脅かす重大な人権侵害です。

バトントワリング界では、競技の特性上、指導者と選手が密接な関係を築くことが多く、特に若年層の選手にとっては、指導者の言動が絶対的な影響力を持つ場合があります。こうした閉鎖的な環境や特異な権力構造が、指導者によるハラスメントの温床となりやすいという構造的な問題が指摘されています。

過去にも、柔道、体操、水泳などの様々な競技で、指導者による不適切な行為が問題となっており、各競技団体は指導者の倫理規定の強化や第三者による相談窓口の設置など、対策を講じてきました。しかし、今回の事件が示すように、水面下で卑劣な行為が繰り返されている現状があり、対策の実効性が改めて問われています。


被害者保護とスポーツ団体の責任

この事件で最も深く傷ついたのは、将来を期待されていた被害者の男子選手です。指導者という信頼すべき存在からの裏切りは、単なる身体的な被害に留まらず、深刻な精神的トラウマ人間不信、そして競技への意欲の喪失など、計り知れない影響を及ぼします。

バトントワリング関係のスポーツ団体には、被害者に対する継続的な精神的なケアと、彼が再び安全に競技を再開できる環境を整える責任があります。また、元指導者という肩書を持つ加害者が、今後もスポーツ指導に関わることを完全に排除するための措置も必要です。

さらに、今回の事件を通じて、スポーツ指導者に対する**性犯罪歴の確認(日本版DBS)**の導入を求める声が、一層高まることが予想されます。指導者になる前に、過去の犯罪歴をチェックする制度は、子どもの安全を守る上で不可欠であり、各競技団体や政府レベルでの早急な検討が望まれます。


判決の持つ意味と今後の課題

京都地裁が下した懲役6年の実刑判決は、指導者の立場を利用した性的暴行の悪質性を司法が厳しく断罪したという点で、重要な意味を持ちます。これは、スポーツ界の全ての指導者に対し、倫理観の欠如権力の濫用は決して許されないという強いメッセージを発するものです。

しかし、刑罰をもってしても、被害者の受けた心の傷が完全に癒えるわけではありません。今後の課題は、この判決を契機として、バトントワリング界、そして日本のスポーツ界全体が、透明性の高い指導環境と、ハラスメントのない文化をどう確立していくかにかかっています。

具体的には、指導者と選手が二人きりになる状況を避けるためのルール作り、保護者や第三者によるチェック体制の導入、そして何よりも選手自身が「ノー」と言える権利を持ち、それを尊重する指導者教育の徹底が求められます。

今回の痛ましい事件の教訓を活かし、スポーツが本来持つべき健全な教育的価値を取り戻すための、社会全体での取り組みが強く期待されます。

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