「日本は核を保有すべきだ」――。
この発言が官邸関係者によるオフレコ発言として報じられ、国内外で波紋を広げています。これまで発言者は「安全保障担当の官邸幹部」などと匿名で伝えられてきましたが、週刊文春の取材により、具体的な人物が明らかになりました。
発言をしたのは、尾上定正(おのえ・さだまさ)総理大臣補佐官。
しかも担当は「核軍縮・不拡散問題」だったことが分かり、議論はさらに広がっています。
■ 問題の発言はどのように出たのか
発言があったのは12月18日、官邸幹部が記者団の取材に応じた際のことでした。
取材形式は「完オフ(内容も一切報じない)」ではなく、「オフレコ(発言者は伏せたまま内容は報じられる)」だったため、各メディアは発言者を匿名にしたうえで、
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日本は核を保有すべきだ
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安全保障上の選択肢として検討が必要
といった趣旨の発言を一斉に報道しました。
この内容に対し、中国政府が反発したほか、国内でも野党だけでなく自民党内からも「看過できない」とする声が上がりました。
■ 発言者は誰だったのか
週刊文春の取材によると、発言の主は尾上定正総理大臣補佐官です。
尾上氏は元航空自衛官で、防衛分野に長く関わってきた人物。2023年から防衛大臣政策参与を務め、高市政権発足後に首相補佐官に就任しました。
担当は「核軍縮・不拡散問題」。
日本が長年掲げてきた「非核三原則」とも密接に関わる職務です。
官邸関係者は文春に対し、
「本音では核保有を肯定的に考えている人物を核軍縮担当にしている時点で、適材適所とは言えない」
と語っています。
■ なぜ更迭されないのか
発言を受けて、前防衛相の中谷元氏が「しかるべき対応を」と述べるなど、更迭を求める声も出ました。しかし、高市首相は現時点で尾上補佐官の更迭に動いていません。
その背景として指摘されているのが、
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尾上氏が高市首相と同郷(奈良県)で関係が近い
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防衛・安全保障分野のブレーン的存在である
といった事情です。
一方で、維新や国民民主の一部からは「問題は発言内容よりオフレコ取材が報じられたことだ」とする論調もあり、論点が分散している状況です。
■ 尾上補佐官の反応と政府の公式見解
尾上補佐官は、文春の直撃取材に対し、
「そういう話は……」「やめてください」
と述べるにとどまり、発言の真意については語っていません。
また、内閣広報室を通じた高市首相側の回答では、
「政府としては、非核三原則を政策上の方針として堅持している」
と、従来の立場を強調しました。
■ 問われる任命責任と説明責任
今回の問題は、単なる一補佐官の発言にとどまりません。
核軍縮を担当する立場の人物が「核保有」に言及したこと、そして首相が明確な説明や処分を行っていないことから、任命責任や政権の姿勢そのものが問われています。
オフレコ発言であっても、その内容が国の基本方針に関わるものであれば、影響は避けられません。
この問題が今後、国会や外交の場でどのように扱われていくのか、引き続き注視が必要です。
