2025年10月14日(日本時間15日)、ロサンゼルス・ドジャースの 山本由伸 投手(27)が、ポストシーズンの歴史に新たな1ページを刻みました。敵地アメリカンファミリー・フィールドで行われたリーグ優勝決定シリーズ第2戦で、山本投手はブルワーズ打線をわずか3安打1失点に抑え、日本人として初めて、そしてチームとしても21年ぶりとなるポストシーズンでの「完投勝利」を達成しました。
しかし、この快挙が全米で話題になっている理由は、ただ「圧倒的な投球内容」だからではありません。米メディアが強調したのは「非不正投手としての完投」という、きわめて異例の表現です。
背景には、8年前にメジャーリーグ全体を揺るがせた「サイン盗みスキャンダル」があります。
■ 「クリーンな完投」…米メディアが強調した異例の見出し
米メディア Sportskeeda は、今回の快挙について
「アストロズ・バーランダーから8年後、山本由伸が『非不正投手として完投した初の選手』」
と報道し、強いインパクトを与えました。
記事では「山本は正真正銘“クリーン”な形でポストシーズン完投を成し遂げた」と評価し、SNS上でも「ヨシノブこそ真の勝者」「ヤマモトがMLBを浄化した」などの声が次々と投稿されています。
この「非不正投手」という表現は、2017年のポストシーズンでの ジャスティン・バーランダー 投手(当時ヒューストン・アストロズ)の完投記録を“暗に皮肉る”ものでした。
■ 2017年の「サイン盗みスキャンダル」とバーランダー
2017年、MLBを震撼させたサイン盗み問題が発覚しました。アストロズが本拠地の試合でカメラを使って相手バッテリーのサインを盗み、ゴミ箱を叩く音などで打者に伝えるという組織的な不正を行っていたのです。
調査の結果、MLBはアストロズの行為を「ギルティー(有罪)」と認定し、球団に罰金500万ドル、さらに20年・21年のドラフト上位指名権はく奪の処分を下しました。
しかし、当時所属していた選手たちへの個別処分や2017年のワールドシリーズタイトルのはく奪は行われませんでした。
このとき完投勝利を記録していたバーランダーの記録も、「サイン盗みの影響があったのでは」という疑念がいまもファンの間に根強く残っています。今回の山本の完投劇は、そうした“疑惑まみれの過去”との対比で特別な意味を持ったのです。
■ ファンの声「クリーンな勝利が見たかった」
SNS上では、アメリカのMLBファンからも次のような投稿が相次いでいます。
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「ついに真っ当な投手によるPS完投が見られた」
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「ヨシノブは野球を取り戻した」
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「もうこのままドジャースにトロフィーを渡せ」
まるで「不正な時代」へのアンチテーゼとして、山本の完投が持ち上げられているのが現状です。
いわば、今回の記録は単なる1勝ではなく、「MLBファンが失った信頼を取り戻す象徴的な試合」となりました。
■ MLBの“黒歴史”をよみがえらせた快投
この快挙によって、2017年のアストロズ問題が再びクローズアップされています。米スポーツ界では不正に対して厳しい目が向けられる中、今回の山本の「非不正」完投は、逆説的にあのスキャンダルを鮮明に思い出させる結果となりました。
米メディア関係者の中には「ヤマモトが完投した瞬間、バーランダーの記録は再び“検証”対象になった」と話す声もあります。
このように「過去の疑惑」と「現在の快挙」がセットで報道されるのは異例であり、それだけ山本の記録がMLBにとって大きな意味を持っていることがうかがえます。
■ 山本の冷静さ「ただ自分の投球をしただけ」
一方で、本人はヒーロー視されることに対して非常に冷静です。試合後の会見で山本は
「初回は甘く入ってホームランを打たれたけれど、あとは自分のボールを信じた。チームがいい守備をしてくれたおかげ」
と淡々と語りました。
大記録を達成したにもかかわらず、あくまで「一試合」としてとらえる姿勢は、日本時代から変わっていません。SNS上ではこの謙虚なコメントにも称賛が集まっています。
■ 大手が触れない「記録の裏側」——MLBの信頼回復という視点
大手メディアの多くが「日本人初の完投勝利」や「圧巻の投球内容」に焦点を当てる一方で、米メディアの一部では「クリーンさ」という異例の角度で報じています。
これは単なる記録ではなく、MLBがかつて抱えた“不信の時代”に対する象徴的なメッセージでもあるのです。
山本の完投劇は、MLBファンにとって「野球の本来あるべき姿」を思い出させるものとなりました。
《まとめ》
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山本由伸がポストシーズンで日本人初の完投勝利
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米メディアは「非不正投手」として報道し、バーランダーを皮肉
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背景には2017年のサイン盗みスキャンダル
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ファンの間では「野球が浄化された」という声も
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MLBの信頼回復を象徴する歴史的な一戦となった
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