中国から長崎に寄港予定だったクルーズ船の相次ぐキャンセルや、長崎―上海便の全欠航が明らかになり、波紋が広がっています。
長崎県の大石賢吾知事は12月23日の定例記者会見で、中国発着のクルーズ船や団体ツアーにキャンセルが相次いでいると発表しました。
背景には、高市総理の国会答弁をめぐる日中関係の緊張があるのではないかとの見方が出ています。
■ 中国発クルーズ船17隻がキャンセル
長崎県によりますと、キャンセルが確認されたのは、
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中国発着で長崎に寄港予定だったクルーズ船
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今年12月から来年3月までの全便
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計17隻
にのぼります。
クルーズ船は観光消費への影響が大きく、1隻あたり数百人から数千人規模の観光客が見込まれていただけに、県内の観光業界には少なからぬ打撃となりそうです。
■ 長崎―上海便も2月まで全欠航
海だけでなく、空の便にも影響が及んでいます。
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長崎―上海間を週2回運航している
中国東方航空の定期便 -
12月途中から欠航
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2026年1月・2月は全便欠航
航空会社から県への連絡では、理由について
「市場の原因のため」
と説明されているということです。
ただし、具体的な需要減少や経済要因については明らかにされていません。
■ 団体ツアーも約80人が中止
このほか、中国からの団体ツアー客およそ80人分についても、訪日が中止になったことが分かっています。
クルーズ、航空便、団体旅行と、複数の交通・観光ルートで同時にキャンセルが発生している点が特徴です。
■ 高市総理の国会答弁との関係は?
今回の一連の動きについて、背景として指摘されているのが、
高市総理の国会答弁です。
高市総理は11月7日の国会で、台湾有事について、
「武力行使を伴うものであれば、日本にとって存立危機事態になりうる」
と明言しました。
この発言に対し、中国政府は「内政干渉だ」として強く反発。
日中関係は一時、緊張感を増していました。
そのため、今回のキャンセルについても、
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中国政府の姿勢を反映した動きではないか
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いわゆる「外交的圧力」「静かな制裁」ではないか
といった見方が出ています。
■ 公式には「余波」と断定せず
ただし、県や航空会社は、高市総理の発言が直接の原因だとは断定していません。
航空会社側はあくまで
「市場の原因」
と説明しており、政治的理由を明言していないのが現状です。
一方で、過去にも中国では、
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外交関係が悪化した国への団体旅行制限
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航空便やクルーズの調整
が行われた例があり、今回も同様の流れではないかと見る関係者もいます。
■ 大石知事「交流維持に取り組みたい」
大石知事は、中国総領事館に対し、
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上海航路の利用促進
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地域間交流が止まらないよう協力要請
を行ったことを明らかにしました。
その上で、
「情報収集に努めながら、交流維持に取り組んでいきたい」
と述べ、観光や人的交流の継続に前向きな姿勢を示しています。
■ 観光地・長崎への影響は
長崎県は、クルーズ観光やインバウンド需要の回復に力を入れてきました。
今回のキャンセルは、
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港湾利用
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宿泊業
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飲食・土産物店
など、幅広い分野に影響を及ぼす可能性があります。
特に中国からの観光客は、消費単価が高いとされており、今後の動向が注目されます。
■ まとめ|問われるのは政治と交流の距離感
今回の一連のキャンセルについて、公式には「市場の要因」とされていますが、
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高市総理の台湾有事発言
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中国政府の反発
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観光・交通分野への影響
が時期的に重なっていることから、政治と民間交流の距離感が改めて浮き彫りになりました。
外交上の発言が、地方の観光や経済にどのような影響を及ぼすのか。
長崎だけでなく、日本全体にとっても無視できない問題と言えそうです。
