両国国技館で行われたトリプル世界戦は、日本のボクシングファンにとって極めて過酷な一夜となりました。WBAライトフライ級王者の高見亨介選手が、WBO王者レネ・サンティアゴ選手との王座統一戦で1-2の判定負け。さらに、悲願の世界奪取を狙った桑原拓選手も、王者オラスクアガの強打に沈みTKO負けを喫しました。「日本勢全勝」の期待が、カリブと米国の実力者によって打ち砕かれた形です。
高見亨介を狂わせた「判定の裏側」!なぜ2団体統一を逃したのか?
高見選手にとって、今回の敗北は単なる1敗以上の重みを持ちます。名門・帝拳ジムが送り出した次世代のスター候補として、盤石の勝利が期待されていました。しかし、1-2というスプリット・デシジョン(判定が分かれること)が示す通り、接戦の中でサンティアゴ選手の老獪なテクニックにポイントを奪われました。
大手が触れないポイントは、11回に見せたサンティアゴ選手の猛攻です。ここで「統一王者の意地」を見せつけたサンティアゴに対し、高見選手は守勢に回らざるを得ませんでした。若き王者が、世界のトップ戦線で「勝ち切る難しさ」を思い知らされた残酷な11分間。この敗北が、帝拳ジムの今後の世界戦略を大きく修正させることは間違いありません。
桑原拓を粉砕した「戦慄の右」!オラスクアガはもはやフライ級の天敵か?
WBOフライ級王者のアンソニー・オラスクアガに挑んだ桑原拓選手でしたが、結果は4回TKO負けという完敗でした。かつて寺地拳四朗選手と激闘を繰り広げた「悪童」オラスクアガの攻撃力は、軽量級の常識を超えています。
桑原選手は大橋ジムが誇るスピードスターですが、その「速さ」を無効化するオラスクアガの破壊的なプレッシャーは、日本の挑戦者にとって絶望的な壁となっています。これでオラスクアガは日本人キラーとしての地位を固め、フライ級で「誰も戦いたがらない怪物」へと進化を遂げてしまいました。
「レジェンド」ドネアの影に隠れた、日本ボクシングの世代交代の停滞?
今回、注目を集めたのは43歳のノニト・ドネア選手でした。しかし、メインイベントにレジェンドが君臨し、20代の若き日本人王者が陥落するという構図は、日本ボクシング界の「新陳代謝」に黄色信号が灯ったとも言えます。
大手のスポーツ紙は「惜敗」「激闘」と美辞麗句を並べますが、現実は「2つのベルトが海外に流出した」という厳しいものです。井上尚弥選手という絶対王者の影で、次代を担うはずの若手たちが世界の壁に跳ね返されている現状。この「高見・桑原の敗北」は、日本ボクシング界が再び「冬の時代」へ逆戻りする前兆ではないかという不安が、関係者の間で囁かれ始めています。
逆襲のシナリオは?高見亨介の再起とバンタム級の混迷!
高見選手はまだ若く、ここからの再起に期待がかかります。しかし、ライトフライ級は強豪がひしめく激戦区。一度失ったベルトを取り戻すための道のりは、以前よりも険しいものになるでしょう。
