冬眠前で活発化するクマの出没が相次ぐなか、秋田県大仙市で起きた一件が全国に衝撃を与えています。
2025年10月8日の朝、散歩中の82歳の女性がツキノワグマに襲われるという事件が発生。そんな女性の命を救ったのは、たまたま後ろから車で通りかかった一人のドライバーの「乗れ!」という叫びでした。
SNSではこの映像がテレビニュースなどを通じて拡散し、「まさにヒーロー」「人間の優しさに泣いた」と称賛の声があふれています。
■ クマが住宅街に出没、背後から襲撃!
事件が起きたのは午前7時前。場所はJR羽後長野駅近くの住宅や商業施設が立ち並ぶ市道でした。
体長約80センチほどの黒いツキノワグマが、線路脇の茂みから突然姿を現し、散歩中の女性の後ろを静かに追跡。別の防犯カメラ映像では、猛スピードでクマが忍び寄る姿がはっきりと映っていました。
女性が異変に気づいて振り返ったその瞬間、クマが真正面から飛びかかってきます。
「うわーー!」
悲鳴を上げながら女性はとっさに身をかわし、クマの攻撃は地面に空振り。その後もクマは執拗に追いかけ、女性の顔を引っかくなどの被害を与えました。
女性は両手で顔を押さえながら後退し、再び飛びかかろうとするクマの勢いを避けて、茂みの反対方向へ逃げます。緊迫の数十秒でした。
■ 「乗れ! 乗れ!」…現れた一台の車
そのとき、背後から1台の車が走ってきました。
女性は必死に手を振り、「クマ、クマ、クマ…!」と叫びます。車は女性の目の前で急停車。ドライバーの男性は窓を開け、大声でこう叫びました。
「乗れ! 乗れ!」
女性はすぐに助手席に乗り込み、車は現場を離脱。茂みに戻ったクマの姿が後方のカメラに映っていました。
この映像は防犯カメラによって記録され、テレビ各局が報じると瞬く間にSNSでも拡散。「とっさの判断がすごい」「一歩間違えば命が危なかった」と大きな話題になっています。
■ コンビニでの迅速な救護
ドライバーは女性を近くのコンビニへと運び、店員に助けを求めました。
コンビニの防犯カメラ映像では、女性が血を押さえながら店に入る姿と、付き添うドライバーの姿が確認できます。
店員の通報で救急車が駆けつけ、女性は搬送されました。幸いにも命に別状はありませんでしたが、顔にけがを負いました。
ネット上では、勇敢なドライバーへの称賛の声が殺到。
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「冷静に避難させたのが本当にすごい」
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「あの状況で止まって助けるなんて普通できない」
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「ヒーローそのもの」
- 「かっこいい、この人誰」
と、ドライバーの行動を讃えるコメントが相次いでいます。
■ 住宅地に出没、識者「クマもパニック状態か」
今回の事件について、地元自治体や識者は「市街地でクマが人を追って襲うのは非常に珍しいケース」とコメント。
専門家によると、山から住宅地に迷い込んだクマは逃げ場を失い、強いストレス状態に陥ることで興奮し、人を攻撃するリスクが高まるといいます。
秋田県ではこの秋、冬眠前のクマが活発に動き始めており、複数の市町村で出没情報が相次いでいます。今回の現場周辺でも、事件当日、線路脇の茂みにクマが徘徊する姿が確認されていました。
■ 高齢者の「朝の散歩」が狙われるリスクも
今回襲われた女性は82歳。地域では高齢者による早朝の散歩が一般的であり、被害のリスクが高まっていると指摘されています。
秋田県内では、2025年に入ってからクマによる人身被害が過去最多ペースで発生。住宅街での遭遇も増加しており、従来の「山に近づかない」という注意喚起だけでは限界があるとの声も上がっています。
■ 行政も「想定外の市街地出没」に警戒強化
事件を受けて大仙市は、現場周辺の見回りや住民への注意喚起を強化。登下校時間帯を中心にパトロールを実施する方針です。
「今回のケースは本当に紙一重だった」と担当者は語っています。
一方で、SNS上では「このドライバーがいなければ命を落としていた可能性もある」「英雄だ」という声が後を絶ちません。
■ 英雄は“通りすがり”の市民だった
報道によると、女性を救ったドライバーは近隣に住む男性。普段通勤でこの道を利用していたといいます。偶然のタイミングが、1人の命を救いました。
「乗れ!」と叫んだ一言は、82歳の女性を恐怖から救い出す“希望の声”になりました。
冬眠前でクマの活動が活発化するこの季節、自治体や住民にとって、あらためて“身近な危険”が突きつけられた形です。