2024年に導入されたものの、発出条件が厳しすぎて「幻のアラート」とも揶揄されていた「熱中症特別警戒アラート」。環境省は17日、その運用基準を2026年度から変更することを決定しました。具体的には、標高が高く気温が上がりにくい13県24地点を判断基準から「除外」します。
一見すると細かな修正に見えますが、これは「平地が灼熱地獄でも、山が涼しければアラートが出ない」という制度の致命的なバグをようやく認めた形です。
なぜ今まで出なかった?「全地点35以上」という無理ゲー設定!
これまでの基準は「都道府県内のすべての観測地点で暑さ指数(WBGT)が35以上」というものでした。 これがどれほど高いハードルかというと、例えば埼玉県で熊谷市が40℃を超えて生命の危険があっても、山間部の秩父などが少しでも涼しければ(指数35未満なら)、県全体としてアラートは発表されませんでした。
今回、標高が高い24地点を参照から外すことで、ようやく「多くの人が住む平野部の危険度」が正しく反映されるようになります。これは改善ですが、裏を返せば「これまで出るべき時に出ていなかった」という行政の設計ミスを修正したに過ぎません。
来夏はアラート「乱発」?自治体や学校現場はパニックの予感!
大手が報じない最大の影響は、基準が現実的になったことで「来年の夏は特別アラートが頻発する可能性がある」という点です。
特別警戒アラートが出ると、自治体は冷房の効いた「クーリングシェルター」を開放する義務が生じ、学校やイベント主催者は行事の中止や変更を迫られます。これまでは「めったに出ない伝家の宝刀」でしたが、頻発するようになれば、シェルターの運営コスト増大や、学校行事・スポーツ大会の日程崩壊など、現場レベルでの混乱は避けられません。「出しすぎによるオオカミ少年化」という新たなリスクも懸念されます。
除外された「涼しい地域」の住民が危ない?「安全」と勘違いする罠
今回除外される24地点(具体的な地名は公表されていませんが、高地や山間部と推測されます)の住民にとっては、別のリスクが生まれます。
自分が住んでいる地域が判断基準から外されたことで、「ウチの地域は対象外だから安全だ」という誤った安心感(バイアス)を抱いてしまう恐れがあります。委員の指摘通り、相対的に涼しくても、急激な気温上昇や湿度によっては十分に熱中症リスクはあります。「除外地域」への注意喚起をどう行うか、環境省は難しいコミュニケーションを迫られます。
「命を守る情報」か「責任回避のアリバイ」か?
2024年の夏、酷暑の中で「なぜ特別アラートが出ないのか」と疑問を持った人は多かったはずです。今回の見直しで、ようやく生活実感に近い運用になることが期待されます。
しかし、アラートはあくまで「情報」に過ぎません。頻発する通知に慣れてしまい、我々が行動を変えなくなってしまえば意味がありません。この変更が、本当に国民の命を守るための改善になるのか、それとも「ちゃんと出しました」という行政のアリバイ作りになるのか。2026年の夏、その真価が問われます。
