親が高齢になってくると、「まだ車を運転しているけれど、大丈夫かな」と心配になることがあります。
以前は問題なく運転していたのに、車に傷が増えた。
狭い道でぶつけそうになった。
信号や標識を見落としているように感じる。
駐車が以前より苦手になった。
そんな変化が重なると、家族としては運転を続けていいのか気になります。
ただ、「もう年だから運転をやめて」と言っても、すぐに納得してくれるとは限りません。
車が親にとって買い物や通院に欠かせないものなら、運転をやめた後の生活まで考える必要があるからです。
では、親の運転が心配になったとき、家族は何から始めればいいのでしょうか。
まずは「危ない」と感じた場面を整理する
親の運転が心配になったら、最初にやっておきたいのが、何が気になっているのかを整理することです。
単に「高齢だから心配」というだけでは、親に話しても納得してもらいにくいでしょう。
例えば、
「最近、駐車するときに何度も切り返すようになった」
「以前はなかった車の傷が増えた」
「信号が変わっても気づくのが遅いことがある」
「右左折するときに周囲を確認する時間が長くなった」
「道を間違えることが増えた」
といった具体的な変化がないか確認します。
一度だけの失敗で判断する必要はありません。
しかし、以前と比べて明らかに変わったことがいくつもあるなら、一度家族で考えてみるきっかけになります。
「運転をやめて」といきなり言わないほうがいい
家族が一番やってしまいやすいのが、いきなり運転をやめるように言うことです。
もちろん、本当に危険な状態なら安全を優先する必要があります。
ただ、親からすると、長年運転してきた車は単なる移動手段ではありません。
買い物に行く。
病院に行く。
友人に会いに行く。
趣味の場所へ行く。
そうした生活の一部になっていることがあります。
そのため、「もう危ないから乗らないで」とだけ言われると、「自分の生活を奪われる」と感じてしまうこともあります。
まずは「最近、運転していて怖いと感じることはない?」と聞いてみるのも一つの方法です。
本人がどう感じているのかを聞いたうえで、「買い物だけ別の方法にできないかな」「夜の運転はやめてみない?」など、できるところから変えていく方法もあります。
どんな運転が危ないのかを一緒に考える
親がまだ運転を続ける場合でも、すべての運転を同じように考える必要はありません。
例えば、昼間の近所のスーパーまでは問題なくても、夜間の運転や雨の日の運転は不安があるかもしれません。
自宅の近所は走れても、交通量の多い道路や高速道路は負担が大きくなっている可能性もあります。
警察庁の安全運転相談でも、加齢による身体機能の低下を踏まえ、夜間や雨天時、交通量の多い道路、朝夕のラッシュ時を避けるなどの「補償運転」が紹介されています。
つまり、「運転するか、しないか」の二択だけで考える必要はありません。
まず危険になりやすい場面を減らし、それでも難しいなら、次の選択肢を考えるという順番でもいいのです。
75歳を過ぎたら、免許更新の仕組みも変わる
親が75歳以上の場合は、免許更新のときに認知機能検査を受けることになっています。
認知機能検査では、記憶力や判断力の状況を確認します。
また、75歳以上で一定の違反歴がある場合には、免許更新の際に運転技能検査の対象となり、合格しなければ免許を更新できない制度があります。
ここで注意したいのは、認知機能検査がそのまま認知症の診断になるわけではないということです。
検査は運転免許制度の中で行われるもので、医師による認知症の診断とは別のものです。
そのため、「認知機能検査があるから大丈夫」「検査に問題がなかったから絶対に安全」と考えるのではなく、普段の運転の様子も合わせて考えることが大切です。
親自身が「運転が怖い」と感じているなら相談してみる
実は、親自身が運転に不安を感じているケースもあります。
「最近、夜は見えにくい」
「駐車が怖くなった」
「知らない道を走るのが不安」
など、本人が何かしらの変化を感じているなら、それは大切なサインです。
家族が一方的に「運転をやめろ」と言うよりも、「一度相談してみよう」と提案してみるほうが受け入れてもらいやすいことがあります。
警察には高齢ドライバー本人だけでなく、その家族も相談できる「安全運転相談窓口」があります。
全国共通の相談ダイヤルは「#8080」です。
「免許を返納するか決めていないけれど、最近の運転が心配」という段階でも相談できます。
免許返納を考えるなら、先に生活の足を考える
親が運転をやめることになった場合、次に問題になるのが「これからどうやって生活するのか」です。
ここを決めないまま免許だけ返納すると、親本人が困ってしまいます。
まず確認したいのは、買い物です。
スーパーまで歩いて行けるのか。
宅配サービスを利用できるのか。
家族が定期的に買い物をするのか。
次に、通院です。
病院までのバスやタクシーが利用できるのか。
家族が送迎できるのか。
訪問診療など、別の方法を検討する必要があるのか。
さらに、銀行や役所、趣味など、車がなくなった後に困る用事も考えておきます。
「車をやめる」だけではなく、「車がなくても生活できる状態を作る」ことが大切です。
免許返納には「運転経歴証明書」という選択肢もある
運転免許を自主返納した場合、希望すれば「運転経歴証明書」の交付を受けることができます。
運転経歴証明書は、運転免許証を自主返納した人などが申請できる、公的な身分証明書です。
また、自治体や事業者によっては、免許返納者を対象にした交通機関の割引などの支援が行われています。
ただし、利用できる支援内容は地域によって異なります。
そのため、返納を考えるときには、住んでいる地域でどんな支援が受けられるのかも一緒に確認しておきましょう。
「返納するか迷っている」という段階でも相談していい
免許返納という言葉を聞くと、「もう運転できなくなる」と考えてしまうかもしれません。
でも、家族が心配になった時点で、すぐに返納を決める必要はありません。
まずは安全運転相談を利用する。
親の運転について気になっていることを整理する。
生活の中で車がどれくらい必要なのかを確認する。
車がなくなった場合の買い物や通院方法を考える。
そのうえで、運転を続けるのか、運転する範囲を減らすのか、免許返納を考えるのかを決めていけばいいでしょう。
大切なのは、家族だけで結論を出そうとしないことです。
親の運転が心配になったら、まずここから
親の運転が心配になったときは、いきなり「免許を返納して」と言う必要はありません。
まず、どんな場面が気になっているのかを整理する。
親本人がどう感じているのかを聞く。
夜間や雨の日など、危険になりやすい運転を減らせないか考える。
必要であれば警察の安全運転相談に相談する。
そして、運転をやめた場合の買い物や通院について考える。
この順番で進めていけば、親と対立するだけの話になりにくくなります。
車を運転できることは、親にとって生活の自由にもつながっています。
だからこそ、「危ないからやめさせる」というだけではなく、「車がなくても今までの生活をできるだけ続けられるようにする」という視点で考えてみましょう。
親の運転に少しでも不安を感じたら、まずは家族で最近の運転について話すところから始めてみてください。


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