全国で、例年とは異なる時期に感染症の流行が報告されています。
通常は冬場にピークを迎えるはずの「RSウイルス感染症」が、今年は猛暑後の秋口に流行期を迎え、感染者数が急増しています。専門医は、特に重症化しやすい「2歳未満の乳幼児」を持つ保護者に対し、厳重な警戒を呼びかけています。
なぜRSウイルスは流行期をシフトさせたのか? そして、風邪と見分けがつきにくい「大人の症状」や、重症化を防ぐための「予防法」について、徹底的に解説します。
徹底調査:「RSウイルス」が秋に流行するようになった背景
RSウイルスは、乳幼児の肺炎や細気管支炎の主な原因となるウイルスです。例年、12月頃から翌年2月頃にかけて流行のピークを迎えるのが一般的でした。
流行期シフトの要因は「集団免疫の乱れ」
専門家は、今回の流行期シフトの背景に、新型コロナウイルスのパンデミック中に徹底された衛生対策があります。
- 免疫の空白期間: コロナ禍で集団生活が制限され、乳幼児がRSウイルスに触れる機会が激減したため、社会全体の集団免疫レベルが低下しました。
- 流行の分散化: 免疫を持たない感受性の高い層が増えたことで、例年の冬だけでなく、秋や初夏など、流行が分散・長期化する傾向が見られています。
特に、激しい寒暖差がある秋口は、体調を崩しやすく、ウイルスが活動しやすい環境となるため、警戒が必要です。
見落としがち!大人のRSウイルス「潜伏期間と症状」
RSウイルスは、乳幼児だけでなく大人にも感染しますが、大人の場合はその症状が軽く、しばしば「ただの風邪」と見過ごされがちです。これが、家庭内感染の大きな原因となります。
大人の主な症状(潜伏期間は4~6日)
- 鼻水・喉の痛み: 風邪と酷似しているため、RSウイルスだと気づかないケースが多いです。
- 長引く「咳」: 他の風邪よりも咳が長期間(2週間以上)続くことが特徴の一つです。
- 発熱: 高熱になることは稀で、微熱程度で済むことが多いため、油断しがちです。
大人が感染しても軽症で済みますが、その大人がウイルスを家庭に持ち込み、免疫のない乳幼児に感染させてしまうリスクが最も恐れられています。
最も危険な「2歳未満の赤ちゃん」重症化リスクと予防法
RSウイルスに初めて感染した乳幼児、特に2歳未満の赤ちゃんは、気道が細いため、ウイルスにより細気管支炎や肺炎を起こし、重症化するリスクが非常に高いです。
赤ちゃんに見られる重症化のサイン
- ゼイゼイという「喘鳴」: 呼吸するたびにヒューヒュー、ゼイゼイという音が聞こえる。
- 陥没呼吸: 息を吸うときに肋骨の下や鎖骨の上がへこむ。
- 多呼吸: 呼吸数が異常に速くなる。
- 哺乳量の低下: 呼吸困難で母乳やミルクを飲むのが困難になる。
これらのサインが見られた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
家庭でできる最も重要な「予防法」
現時点ではRSウイルスに対する有効な特効薬はありませんが、予防接種(シナジス)や、以下の基本的な対策が重要です。
- 手洗い・うがい: 帰宅時や調理前の徹底。大人から赤ちゃんへの感染を防ぐ最重要対策です。
- タオルの共用禁止: ウイルスが付着しやすいタオルや食器の共用は避ける。
- マスク着用: 大人が風邪のような症状を感じたら、家庭内でもマスクを着用し、赤ちゃんへの飛沫感染を防ぐ。
RSウイルスは、単なる風邪とは異なる「季節外れの脅威」として、最大限の注意が必要です。
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