日産、エスピノーサ新社長体制を発表 経営刷新と世界レベルの人員削減で立て直しへ

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日産自動車は2025年5月12日、新経営体制と組織改革を発表しました。

新たな代表執行役社長兼CEOには、チーフ・プランニング・オフィサーを務めていたイヴァン・エスピノーサ氏が就任し、長年トップに立っていた内田誠氏は退任します。

同時に発表されたのは、グローバルベースでの人員削減を含む大規模な構造改革であり、業績の立て直しと国際競争力の回復に向けて、日産は大きなかじを切ることになりました。



内田体制からの転換、新社長にエスピノーサ氏

2019年12月に社長に就任し、ゴーン体制崩壊後の再建を担ってきた内田誠氏は、5年余りの任期を経て退任することになりました。

後任のイヴァン・エスピノーサ氏は、これまで商品戦略の中核を担っており、日産の電動化・ソフトウェア戦略にも深く関わってきた人物です。

欧米・アジアの市場に精通し、グローバル経営に強い感度を持つことから、これまでの“内向きな経営”からの脱却が期待されています。

エスピノーサ氏は就任にあたり、「日産が今後10年、世界の自動車市場でサステナブルかつ競争力あるプレイヤーであり続けるためには、構造的な改革が不可欠」と述べています。

組織体制の大幅見直しと執行職制度の導入

今回の改革では、従来の執行役員制度を廃止し、執行職制度を導入することが発表されました。

役職の階層を減らし、迅速かつ明確な意思決定ができる体制を目指します。

これにより執行職ポジションは従来比で約20%削減され、管理コストの圧縮と機動性の向上を図るとしています。

また、地域単位での自律性を高めるため、各リージョンに経営権限を移譲する方針も示されました。

これにより、各市場の特性に即した柔軟な商品戦略や価格政策が展開できるようになります。

世界で数千人規模の人員削減を発表

特に注目されているのが、今回の改革で発表されたグローバル人員削減計画です。

エスピノーサ新社長は記者会見で今後2年間で全世界の正社員を含む従業員数を数千人単位で減らす予定」であることを明言しました。

対象となるのは、主に欧州や南米地域における生産・開発部門の一部であり、日本国内の拠点についても「効率化の対象になり得る」として検討が進められていると報じられています。

人員削減の手法としては早期退職制度の導入、契約社員の更新停止、一部工場の稼働縮小などが検討されています。

これらの削減策は、販売台数の伸び悩みと固定費の増加に対応するものであり、競争力ある企業体質への移行が急務とされています。



新経営陣の顔ぶれ

引用:ダイヤモンド・オンライン

新体制では以下の主要幹部が発表されています:

  • ギョーム・カルティエ氏:チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)に就任。グローバル市場の収益管理とマーケティングを統括。
  • 赤石永一氏:チーフ・テクノロジー・オフィサー(CTO)としてEVと次世代パワートレインの開発を指揮。
  • 平田禎治氏:チーフ・モノづくり・オフィサーとして、生産と物流の最適化を担当。
  • ジェレミー・パパン氏:引き続きチーフ・ファイナンシャル・オフィサー(CFO)として財務戦略を継続。

なお、社外取締役については現体制を維持する方針とされており、「刷新を期待していた投資家にとっては肩透かし」との声も上がっています。

業績不振と経営への信頼回復が課題

日産は2024年度も営業利益が前年比で減少しており、特に中国市場と欧州市場での苦戦が業績を圧迫しています。

EV戦略もトヨタやBYDに遅れをとっているとの評価が多く、今回の人事・組織改革は「経営の信頼回復とEV競争への再挑戦」と位置付けられています。

エスピノーサ氏は、「日産ブランドの価値を再構築し、世界中の顧客と従業員の信頼を取り戻す」と力強く語っており、社内外への説明責任を果たしながら改革を進めていく構えです。

新体制で立て直せるか 今後の期待

今回の人事・組織再編は、単なるトップ交代にとどまらず、日産という企業が構造的な変化を迫られていることを象徴しています。

ポスト・ゴーン時代を支えた内田体制は一定の成果を残しつつも、厳しい外部環境には対応しきれなかった印象が否めません。

数千人規模の人員削減という判断は、従業員や地域経済に与える影響も大きく、今後はその「痛み」をいかに最小限にし、成長へと転換できるかが問われます。

日産の再生には、スピード感ある実行力と透明性あるコミュニケーション、そして現場との信頼関係の再構築が欠かせません。

新体制の手腕に期待が集まる中、今後の動きから目が離せない状況です。



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