日本酒が中国で「通らない」異変
「最近、中国向けの日本酒がなかなか通関しない」
そんな声が通商関係者の間で広がり始めたのは、2025年11月以降のことでした。
2026年1月9日、関係者への取材で、中国税関当局が日本酒や日本産食品を対象に検査を強化し、通関手続きに大幅な遅れが生じていたことが明らかになりました。
とくに影響が大きかったのは、日本酒。
一部の中国主要貿易港では、通常では考えにくい対応が取られていたといいます。
抜き取り検査「5%→100%」という異常事態
関係者によると、天津の貿易港では――
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通常:約5%程度だった抜き取り検査
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↓
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突如100%検査に引き上げ
その結果、
👉 通関にかかる時間は通常の約2倍
👉 およそ1か月近く港で足止め
という事態に発展しました。
日本酒は温度管理や鮮度も重要な商品です。
1か月も通関が遅れれば、流通や販売計画に大きな影響が出るのは避けられません。
さらに、上海の貿易港でも同様の遅れが確認され、
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通関書類の追加提出
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審査がなかなか進まない
といった対応が取られていた可能性があるとされています。
発生時期は「高市首相の台湾有事答弁」以降
では、この通関遅延はいつから始まったのか。
関係者が指摘するのは、
高市首相が台湾有事に関する国会答弁を行った2025年11月以降というタイミングです。
もちろん、中国側は公式に
「高市首相の発言への対抗措置だ」
とは一切認めていません。
しかし、
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発言の時期
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対象が日本酒や食品に集中
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特定の港で検査が急激に厳格化
こうした点を踏まえると、
政治的メッセージが“通関”という形で表れた可能性を疑う声が出るのも無理はありません。
日本酒は中国向け輸出の「最大市場」
この問題が軽視できない理由の一つが、日本酒の輸出状況です。
財務省の貿易統計によると、
2024年の日本酒の中国向け輸出額は約116.7億円。
これは国・地域別でトップ。
中国は日本酒にとって、まさに「最大の成長市場」でした。
近年は、
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高級日本酒ブーム
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富裕層・若者層への浸透
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和食人気の定着
などを背景に、輸出量・金額ともに右肩上がり。
その矢先に起きた今回の通関遅延は、業界にとって決して小さな出来事ではありません。
「中央指示ではなく、現場の“忖度反日”?」
興味深いのは、今回の対応についての中国事情通の見方です。
日中関係筋はこう指摘します。
「共産党指導部の明確な指示というより、日本に対する中央の強硬姿勢を見て、現場が独自に判断した“忖度反日”だった可能性がある」
つまり、
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「上から命令があった」とは言えない
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しかし「空気を読んで厳しくした」可能性
中国では、こうした**現場レベルの“過剰対応”**が起きることは珍しくありません。
結果として、
「公式発表なし」
「理由もはっきりしない」
それでも実質的な圧力だけがじわじわ効いてくる――
それが今回の構図です。
すでに始まっている“経済カード”の応酬
実は中国は、ここ最近、日本に対する経済的措置を次々と打ち出しています。
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日本産水産物の事実上の輸入停止
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中国国民に対する日本渡航の自粛呼びかけ
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2026年1月6日には、デュアルユース(軍民両用)製品の対日禁輸を開始
こうした動きを並べて見ると、
今回の日本酒通関遅延も「単発のトラブル」と片付けるのは難しい状況です。
現在は「解消方向」も、再発リスクは残る
関係者によると、現在は日本酒などの通関遅延は解消に向かっているとみられています。
ただし、
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明確なルール変更が示されたわけではない
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政治情勢次第で再び厳格化される可能性
こうした不安は消えていません。
輸出業者の間では、
「いつ、また同じことが起きてもおかしくない」
という警戒感が根強く残っています。
まとめ:日本酒が映し出す日中関係の“温度差”
今回の日本酒通関遅延は、
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高市首相の台湾有事答弁以降に発生
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中国主要港で検査が異例の厳格化
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日本への経済的威圧と受け取られかねない対応
という点で、単なる物流トラブル以上の意味を持ちます。
政治と経済は「切り離す」と言われながらも、
現実には最も分かりやすい形で影響が出るのが貿易です。
日本酒――
それは文化であり、嗜好品であり、そして外交の温度計でもあるのかもしれません。
今後、日中関係がさらに冷え込めば、
次に影響を受けるのはどの産業なのか。
静かに、しかし確実に注視が必要な局面に入っています。

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